はじめに
中国の広域経済圏構想「一帯一路」は、アジア、中東、欧州を陸路と海路のシルクロードでつなげようとする壮大な構想であり、アジアを中心として広域的な経済秩序の形成を促すポテンシャルをもつものである。陸路のシルクロードは「シルクロード経済帯」、海路のシルクロードは「21世紀海上シルクロード」と呼ばれ、「一帯一路」はその総称である。「一帯一路」構想は今やアフリカ、ラテンアメリカ、北極海にまで広がっているが、やはりその中核はアジアである。「一帯一路」構想がカバーする沿線国は当初は中国と合わせた計65か国とされたが、今や131か国に上っているものとみられる。
図1:「一帯一路」構想: 陸と海のシルクロード
「一帯一路」構想は、中国が主導して、中国と沿線諸国をインフラや貿易・投資でつなげることで各国の経済発展を促そうとする点で、プラスに評価すべき意義をもつ。中国がその増大する経済力、金融力をアジアのインフラ構築、連結性強化、経済発展、経済統合という国際公共財の提供のために用いるとすれば、それは望ましいからである。その一方で、「一帯一路」構想は、中国自身の地政学的・軍事的な勢力圏を拡大させて既存の国際秩序に挑戦するための手段であり、とくに沿線諸国に過剰債務を負わせて「債務の罠」に追い込み政治的な影響力を強めようとしているのではないか、という懸念が持たれている。そうした懸念や軋轢が高まり、既存の覇権国・地域や参加諸国の支持を得ることができなければ、「一帯一路」構想は十分進捗しない可能性がある。
「一帯一路」構想の課題
米国とEUは近年「一帯一路」構想に強い懸念を表明しており1、一部の参加国(マレーシア、パキスタン、モルディブなど)の間では対中債務の積み上がりを警戒して「一帯一路」事業の見直しを進めている。とりわけ、この構想が中国の勢力圏拡大のために用いられ、借り入れ国の経済・社会・環境・財政の維持可能性を脅かしているという認識が持たれている。以下、「一帯一路」構想の課題を6点にまとめて説明する。
第一に、「一帯一路」沿線国の間の政治体制、法制度、経済システム、価値観が異なるが、中国は相対的に経済発展の遅れた諸国にインフラ融資を行うことで自らの権威主義的な統治モデルを輸出しつつあるという懸念が挙げられる。中国の対外援助は、伝統的に相手国の国内事情に干渉しない「内政不干渉」の原則に則っているが、それは相手国が明らかに人権を抑圧する権威主義的な政権であっても支援に国際基準を適用せず、そうした政権を支援して正当化し、その不正や腐敗を見逃すことにつながりやすい。こうした姿勢は多くの途上国の権力者に好まれるが、現地の国民の反発を買うケースが増えている(スリランカやモルディブなど)。
第二に、中国は、「一帯一路」事業を通じて経済支援の受け入れ国の利益を優先するのではなく、自国企業の経済的な利益を最優先する傾向があることが指摘される。たとえば、事業を受注するのは中国国有企業が圧倒的に多く、そうした中国企業はインフラ建設に必要な資材や機器を現地で調達するのでなく中国から輸入したり、大量の中国人労働者を動員したりするため、現地にもたらされるビジネス機会、雇用機会、ノウハウ移転が極めて限られている2。また、それらの中国企業が、環境面、安全面、税制面、雇用面などで、沿線国の規制や法律を無視ないし軽視するかたちで事業を進めているという批判もある。「一帯一路」事業は中国企業や中国人労働者を潤すだけで、沿線国の真の利益につながっていない可能性がある。
第三に、中国は「一帯一路」事業を通じて世界各地で鉄道や港湾などのインフラ整備を行うことで戦略的な足掛かりをつくり、中国の事実上の「勢力圏」をつくり、現行の国際秩序を再編しようとしているという疑念が持たれている。「一帯一路」の下で建設・運営される港湾が軍事転用されると、中国海軍の海洋での到達範囲を広げることにつながるからである。たとえば米国やインドは、中国がいくつかの南アジア・東南アジア諸国(モルディブ、ミャンマー、パキスタン、スリランカなど)で港湾開発を支援し、それらの港湾に中国海軍の艦船を自由に寄港させることで、自らの安全保障が脅かされるのではないかと、危惧している。
第四に、「一帯一路」事業を巡っては、中国からのインフラ融資が、相手国の債務返済能力を十分考慮された上で行われているわけではないという問題がある。たとえばスリランカ政府は、ハンバントタ港の建設に必要な費用の大半を中国からの融資で賄ったが、債務返済に行き詰まり、2017年12月に債務軽減と引き換えに港湾株式の85%を中国国有企業に99年間貸与し、同港の運営権を引き渡すことになった。こうした事態は、スリランカ国内で、自国が「債務の罠」に陥って中国の事実上の植民地となり、主権が侵害されていると批判されている。実際、中国政府の意向や政治・軍事目的が優先するインフラ事業では、採算が度外視されて融資が行われる傾向にあるため、最終的に債務不履行に陥りかねないリスクがある3。
第五に、クロスボーダー型のインフラ・プロジェクトに関して、国際的な総合調整機関が存在しないという問題がある。国内的には、「一帯一路」建設事業指導グループが設立され、国内調整がめざされている。しかし国際的には、「一帯一路」事業は基本的に中国をハブとする二国間のプロジェクトの集積であって多国間の実務的な枠組みはなく、国際的な調整メカニズムも存在していない。二国間のみの枠組みでインフラ・プロジェクトを進めると、第三国に影響を及ぼす可能性があるものの、多国間でそうした問題を協議するための場やメカニズムが存在しないのである。
第六に、「一帯一路」事業では、インフラ・プロジェクトの結果を評価するための枠組みが存在していない。世界銀行(以下、世銀)やADBなどとの協調融資であれば、これらの機関が評価システムをもっているが、通常の「一帯一路」プロジェクトの場合には評価メカニズムの枠組みは存在していない。アジアには、大メコン河流域(GMS: Greater Mekong Subregion)開発、南アジア地域経済協力(SASEC: South Asia Subregional Economic Cooperation)、中央アジア地域経済協力(CAREC: Central Asia Regional Economic Cooperation)などのサブ地域レベルの多国間協力メカニズムがあり、いずれもADBが調整機能を担い、確立された評価システムが存在している。「一帯一路」事業では、6大経済回廊など重要なプロジェクトにおいてさえ、明確な評価メカニズムが導入されていない。
「一帯一路」構想の改善の方向性
「一帯一路」構想が、地域諸国と域外諸国の利益となる国際公共財としての意義をもち、同時に国際調和的なものとして機能するためには、上記の課題に応えていくことが重要だ。「一帯一路」構想の改善の方向として、以下の点を挙げたい。
・強権的・権威主義的な政府に対して「中国モデル」を広げるためのインフラ支援を避けること・「一帯一路」構想が地政学的・軍事的な目的をもたないことを明確に示していくこと・沿線国の規制や法令を順守し、現地でのビジネス機会、雇用機会、ノウハウの移転の向上、環境保全に努めること・沿線国の債務返済可能性の維持に配慮した貸付けを行って「債務の罠」をつくり出さず、公的債務の返済に問題が生じた際には一定のルールの下で解決すること・「一帯一路」プロジェクトで構築されるインフラが全ての国の人々や企業に開放されることに加え、透明な調達制度の下で海外企業の事業参加が可能になること・全ての沿線国にとって利益になる公平な運営を行うために、意思決定方式を多国間化すること・少なくとも6大経済回廊など大規模インフラ・プロジェクトについては、その結果を評価する枠組みを導入すること
習近平国家主席は、2019年4月の第2回「『一帯一路』 国際協力サミットフォーラム」での演説で、プロジェクトの建設や運営について「国際スタンダードに基づいて実行し、各国の法律・法規を尊重しなければならない」とした上で、財政上の持続可能性を確保する必要性を訴え、「債務の罠」への懸念に留意した。中国がこうした問題を意識し始めた点は評価すべきだろう。ただし、借り入れ国の債務返済可能性を確保するための出発点として、中国が各国に行っている対外援助・経済協力の詳細を公表することが望ましい。中国は経済協力開発機構(OECD)の援助開発委員会(DAC)に加盟しておらず、その対外債権の詳細なデータを公表していないが、重要な公的債権国として、データの公表が望まれる。また中国はパリクラブにオブザーバーとして参加しているものの、正式メンバーではなく債務国の公的債務の救済処置には参加していない4。 中国は、世界第二の経済大国、重要な債権大国としてパリクラブに正式参加し、債務国の債務再編成の作業に関わるべきだ。それにより、中国の経済支援が「債務の罠」につながることを避けられよう。
中国が主導して設立したAIIBは国際的な開発銀行として、世銀やADBなどとの協調融資を多く行ってきたことから、上記の点はひとまずクリアして、国際的な基準に則って進められてきたといってよい。それに対して「一帯一路」事業は、基本的に中国をハブとする二国間プロジェクトの集積であるが、これを多国間化していくことが有用だろう。その方策として、世銀が全体の調整役として「一帯一路」構想を支援していくことを勧めたい。世銀が関与することで、「一帯一路」構想が中国のみを利するのでなく、すべての参加国にとって有用な透明性の高いプログラムにしていくことができる5。中国も世銀が「一帯一路」構想に関与することで、この構想が国際社会によって認知されることに強い関心をもつはずだ。
日本と「一帯一路」構想
日本政府は当初、中国の「一帯一路」構想に対して積極的な姿勢を示していなかったが、17年に入ってそのスタンスを変えた。安倍首相は、17年5月に北京で開催された「『一帯一路』国際協力サミットフォーラム」に政府代表団を派遣し、同6月には東京で「一帯一路」構想に対して条件付きで支持を表明した――「一帯一路」のインフラへのアクセスが開放されていることや透明かつ公正な調達方式を採用すること、プロジェクトに経済性があり債務が返済可能で財政の健全性が保たれること。このような国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、「一帯一路」構想は、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合していく、そして、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことが期待できるとした。日本としては、中国との第三国協力を通じて、「一帯一路」がより国際スタンダードに沿った運営になるよう促していくという戦略をとっているものと考えられる。18年10月には、日中平和友好条約締結40周年と安倍晋三首相の7年ぶりの訪中に合わせて、日中の政財界による「第三国市場協力フォーラム」が開かれ、52件の日中企業間の覚書が締結された。
今後、日中協力が進むことで、日本はAIIBに参加することになるのだろうか?AIIBは当初懸念されていたいくつかの問題をクリアしてきたように見受けられるものの(河合 2018、2019a)、日本がAIIBに参加するためには、日本と中国の間に信頼関係が構築される必要があろう。安倍首相と習近平国家主席が数多くの会談を積み重ね、将来のアジアのあり方、日中関係のあり方などについて十分な議論をつくし、相互の立場を理解し、信頼関係を築くことが必要だろう。AIIBはアジアの国際金融機関であり、地域の経済大国である日本がアジアのインフラ整備のルールづくりに積極的に関与し、経済発展に貢献することの意義は大きい。アジアの多くの途上国も、日本と中国が協力することで中国の影響力を相対化しバランスを図っていくことを望んでいる。日本は、ADBを主導しかつAIIBに参加することで、アジアの経済秩序づくりに関わり、中国が多国間の枠組みや国際ルールに沿った行動をとるよう促していく役割を果たすことができる。
「自由で開かれたインド太平洋」構想の課題と方向性
安倍首相は、2016年8月、ケニアのナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で、「自由で開かれたインド太平洋」戦略を打ち出した。東アジアを起点として、南アジア・中東・アフリカへと至る地域で、①法の支配,航行の自由等の基本的価値の普及・定着、②経済的繁栄の追求、③平和と安定の確保、を三本柱にすえ、インド太平洋を自由で開かれた地域としてその平和と安定と繁栄を確保しようとするものだ。このうち②の経済的繁栄を追求する手段として、物理的連結性(「質」の高いインフラ)、人的連結性(教育、職業訓練、友好関係)、制度的連結性(EPAやFTAを通じた調和および共通のルール)の3つの連結性が重視されている。さらに、アフリカ諸国に対してオーナーシップを尊重した国造りを行うとされる。日本政府は18年後半以降、「インド太平洋」戦略が中国の「一帯一路」構想への対抗戦略だという意味合いを薄める目的で、「戦略」に代えて「ビジョン」ないし「構想」という表現を用いている。
「自由で開かれたインド太平洋」構想にはいくつかの課題がある。まず、この構想が中国の「一帯一路」構想と対抗する意味合いをもちつつも、それとの協調が進められる中で、そのバランスをどうとっていくべきかという問題がある。アジアの途上諸国はいずれも「インド太平洋」構想と「一帯一路」構想の双方と連携したいと考えており、そのどちらを選択するのか迫られたくないと考えている。そうした観点から日本は、「一帯一路」の問題点を指摘しつつ中国と協力できるところは協力する一方で、他のアジアの途上諸国を「インド太平洋」構想に取り込んでいくために魅力的なプロジェクトを提供していく必要がある。
さらに、中国の「一帯一路」構想と比べて、「インド太平洋」構想の進捗状況が遅れているという問題がある。「一帯一路」構想では、6大経済回廊などメガプロジェクトが立ち上げられており、それ以外にもエネルギーや交通分野などで多くのインフラ・プロジェクトが進行中である。それに比べてインド太平洋地域では、どのようなインフラ投資を行って地域の連結性を高めていくのか、明確な行動計画ができていないのが現状である。
「インド太平洋」構想を単なる理念に終わらせないためには、それを具体化し、実効性のあるものにしていく必要がある。つまり、この構想に経済的な実体を持たせていくことが重要だ。そのためのアクションとしては、インフラの連結性の強化、貿易・投資の拡大、インフラ融資の増強が挙げられる。
第一に、インフラの連結性については、インド太平洋地域を質の高い交通、エネルギー、デジタルのインフラで連結していくことが挙げられる。アジアには、既述のように、GMS、SASEC、CARECなど、様々なサブ地域レベルの多国間協力メカニズムがある。こうしたサブ地域内で国と国との間の連結性プログラムを強化するだけでなく、複数のサブ地域を相互に連結していくという発想が重要だろう。
ADB‐ADBI(2009)は、これらのサブ地域を超えるアジア全域において、クロスボーダーインフラ・プロジェクトを調整する機関として「インフラ投資フォーラム」の設立を提唱している。このフォーラムは、関係する国際機関(国際通貨基金〔IMF〕、世銀、ADB、欧州復興開発銀行〔EBRD〕、イスラム開発銀行[IsDB]、AIIBなど)や二国間機関と連携しつつ、アジア広域的な見地から優先すべきインフラ事業やファイナンス方式を特定し、それに沿ってサブ地域・国別の優先プロジェクトを特定し、プロジェクトを管理し評価するシステムをつくっていく役割を担うものである。こうしたインフラ投資フォーラムをインド太平洋地域でつくっていくのである。
サブ地域とサブ地域をつなげる具体的なプロジェクトとして、まずインドを含む南アジア地域(SASEC)とメコン地域(GMS)を東西につなげることから始めてみることが有益だろう。あるいは、中央アジア(CAREC)と南アジア(SASEC)を連結させることも展望すべきだろう。
第二に、貿易・投資の拡大については、東アジアのサプライチェーンをインド太平洋地域に拡大させて、自由で大きく開かれた貿易・投資圏をつくっていくことを目指すべきだ。そのためにはまず、「インド太平洋」構想の中核諸国である日豪印やASEAN諸国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定の交渉をなるべく早期にまとめることが必要だ。RCEPは中国を含むことから、その協定発効は包摂的な「インド太平洋」構想を実現させていく上でも望ましい。次いで、RCEPに他のインド太平洋諸国(バングラデシュやスリランカなど)を引き込んで、拡大RCEPとして貿易・投資圏を広げていくことを検討していくべきだ。日本はこうした諸国とも積極的にEPA交渉を行い、拡大RCEPの後押しをすべきだろう。さらにその中で準備の整った国から、TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への加盟を促していくことも有用だ。そして米国がTPPに復帰し、中国もTPPに参加することになれば、アジア太平洋地域自由貿易圏(FTAAP)が視野に入ることになり、「一帯一路」構想と「自由で開かれたインド太平洋」構想も融合の可能性が高まろう。そのためには、言うまでもなくインドをアジア太平洋経済協力(APEC)のメンバーとして迎えるべきだ。
第三に、インフラ融資については、日米豪の政府系金融機関が民間部門のインフラ事業に融資や保証等を行う枠組みが出来つつある。たとえば、米国は既存の海外民間投資公社(OPIC: Overseas Private Investment Corporation)と国際開発庁(USAID: United State Agency for International Development)の機能の一部を集約して新たな政府系金融機関である米国際開発金融公社(USIDFC: U.S. International Development Finance Corporation)を設立し、新組織に約600億ドルの資金権限を与えることになっている。日本は17年から5年間で2,000億ドル(年平均400億ドル)に上る資金支援を行い、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)を動員して民間資金を呼び込む考えだ。豪州は外務貿易省と輸出信用機関による資金融資や貿易保険を通じて、民間資金を呼び込もうとしている。しかしそれだけでは不十分だろう。世銀、ADB、EBRDなどの国際開発金融機関に積極的に関与するよう促すべきだ。また、新アジア戦略をつくったEUの連結性原則は日本の「質」の高いインフラの考え方と極めて近いことから、インド太平洋地域でのEUのインフラ向け単独融資や日-EUのインフラ協力を促していくことも重要だ。さらに、インドが独自の開発銀行を設立して国内外のインフラ融資に積極的に関与していくことも有意義だ。ただ、これらの公的機関の資金だけでは不十分なので、民間資金を動員していく官民連携(PPP)の枠組みをさらに強化していくべきだろう。
このように「自由で開かれたアジア太平洋」構想に経済的な実体をもたせていくことで、その構想を実効性のあるものにでき、かつそのことで「一帯一路」構想の改善を促すことができるように思われる。ただ、それを大きく進めるためには、米国がTPPなど多国間の貿易・投資の枠組みに復帰し、「自由で開かれたインド太平洋」構想により深くコミットすることが望ましい。
【参考文献】
河合正弘「『一帯一路』構想とAIIBの役割(2016-2018年)」、『運輸と経済』、第78巻、第12号(2018年12月)、49-57頁。河合正弘「AIIBは中国にとってどのような意味を持つか?」、羽場久美子編『21世紀、大転換期の国際社会:いま何が起こっているのか?』(法律文化社、2019年1月)、78-96頁。河合正弘「『一帯一路』構想と『インド太平洋』構想」、日本国際問題研究所『反グローバリズム再考:国際経済秩序を揺るがす危機要因の研究』(2019年3月)Asian Development Bank (ADB) - Asian Development Bank Institute (ADBI). Infrastructure for a Seamless Asia (2009). Tokyo: Asian Development Bank Institute.
https://www.adb.org/sites/default/files/publication/159348/adbi-infrastructure-seamless-asia.pdfHillman, Jonathan "Belt and Road Initiative: Five Years Later." Written testimony for the U.S.-China Economic and Security Review Commission (January 25, 2018). Washington, DC: Center for Strategic and International Studies.
https://reconnectingasia.csis.org/analysis/entries/chinas-belt-and-road-initiative-five-years-later/Hurley, John, Scott Morris, and Gailyn Portelance. "Examining the Debt Implications of the Belt and Road Initiative from a Policy Perspective." CGD Policy Paper 121 (March 2018). Washington, DC: Center for Global Development.
https://www.cgdev.org/publication/examining-debt-implications-belt-and-road-initiative-a-policy-perspective
2 Hillman (2018)によれば、中国が海外で手掛けている交通インフラ事業の 89%が中国企業との契約となっている。ADBや世界銀行など多国間開発銀行が行う事業への中国企業の契約獲得率が 29%であることからすると、「一帯一路」プロジェクトにおける中国企業優遇の姿勢が明らかだろう。
3 米国のシンクタンク、センター・フォー・グローバル・ディベロップメントのHurley, Morris and Hurley, Morris and Portelance (2018)は「一帯一路」沿線国における2016年の債務データを検討した結果、ジブチ、キルギス、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8か国が「深刻な債務リスク」に面していると指摘している。また、Hurleyらは、これら8か国以外の15か国を「高い債務リスク」に面しているとしており、それにはスリランカやカンボジアが含まれている。
4 パリクラブとは、主要な債権国政府と債務国政府が二国間の公的債務の再編協議を行う非公式会合である。パリクラブにおける債務再編には、おもに債務繰延(リスケジュール)と債務削減の2つがあり、債権国間の負担の公平性の確保などについて協議が行われる。
5 世銀は、以下のサービスを提供することでその役割を果たすことができる:①主要な「一帯一路」プロジェクトの分析と評価、②中立的なブローカーとして各国間の利害調整、③各国の経済発展戦略と「一帯一路」プロジェクトの整合性確保、④国際的な融資基準(環境・社会的基準、入札の透明性)の遵守、⑤借り入れ国の公的債務の維持可能性分析と債務返済問題時の解決支援。