はじめに
2012年11月の発足以来5年間の習近平政権の政治運営を総括するに、その最大の特徴は、中国共産党中央指導部、なかんずく習近平総書記に対する権力の集中にある。すでに広く論じられている通り、2017年10月18日から24日にかけて開催された第19回中国共産党全国代表大会(19全大会)は、そのことを中国の国内外に対して強く印象付けるものとなった。
本レポートもまた、19全大会を軸に、習近平の有する「権力」を論じようとするものである。ただし本レポートの焦点は、上記の事実を確認することよりも、習近平の権力を制約する諸要素に、あるいは、習近平個人の権力欲や能力よりも、習近平への権力集中を可能にした環境的背景に当てられる。言い換えれば、本稿が明らかにしようとするのは、習近平が強力な権力を有していることそれ自体ではなく、習近平が有している権力の制度的範囲・程度(=「権限」)、およびその時局的背景である。
19全大会の直後、習近平の権力をめぐって、それを毛沢東による独裁になぞらえる(文字通りの意味において)ジャーナリスティックな記述が多く観察されたが、その種の見立ては(中国現代史を専門に学ぶ者としてその「興味深さ」を否定しないが)、やや一面的に過ぎるだろう。19全大会から数ヵ月を経た今、関連の情報や研究を精査した上で、習近平権力の現状を、その「強さ」と「弱さ」を含めて、より制度的かつ文脈的な観点から分析することが、本稿の目指すところである。
以下、本稿(上)では、19全大会とその直後に開催された第19期中央委員会第1回全体会議(19期1中全会)の結果を分析することを通して、習近平の権力をめぐる「均衡点」の所在を明らかにし、次稿(下)では、習近平が現在の権力を手にすることを可能にした(主として歴史的な)背景を論ずる。
1.習近平の権力はどれほど強力なのか?
(1)習近平の権力の強化を示唆するもの
19全大会において採択された修正『中国共産党章程』(以下『党規約』)と、19期1中全会で明らかにされた新指導部の構成は、習近平が強力な権力と権威を有することを多くの点で示唆した。すでに多くの先行研究に明らかであるが1、以下の4点にその要点をまとめることができるだろう。
第一は、改正された『党規約』において、習近平の名を関する思想(=「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」)が党の行動指針として盛り込まれたことである。このことは、少なくとも過去二代の指導者を大きく上回るスピードで、習近平が強大な権力を手にするに至ったことを表している。
ここでいう「新時代」の最大の特徴は、19全大会の報告によれば、社会の主要矛盾が、「人民の日増しに大きくなる物質的文化的需要と遅れた社会生産力の間の矛盾」から、「人民の日増しに大きくなるすばらしい生活への需要と、発展の不均衡・不十分の間の矛盾」へ変化したことにある。これは、「改革開放」以来「生産力」が顕著に上昇した結果、中国は諸外国に比して「遅れた」状態ではなくなったという認識に基づくものである。中共中央党校の辛鳴の解説によれば、前者は「発展する前の矛盾」で、後者は「発展した後の矛盾」ということになる2。習近平は、この「新時代」への到達を導いた指導者として認定されることで、その党内における権威を高めることとなった。
第二は、新たな中央政治局常務委員、政治局委員として、習近平に近いと目される人物が多く登用されたことである。評者によって名簿は若干異なるが、常務委員では、栗戦書と趙楽際、政治局委員では、丁薛洋、(王晨、)劉鶴、許其亮、李希、李強、楊暁渡、張又侠、陳敏爾、陳希、黄坤明、蔡奇が、習近平と個人的に強いつながりを持つと見られ、これにより政治局25名中15名(ないし14名)が習近平および習近平人脈によって占められることとなった3。より興味深いのは、新政治局員の内、丁薛洋、李希、楊暁渡、黄坤明、蔡奇の5名が、平の中央委員会委員ないし中央候補委員を経験することなく「特進」で政治局入りを果たしていることである。こうした人事には明らかに習近平の意向が反映されていると考えられる。
第三に、過去2回の権力継承の慣習が破られ、5年後の指導者候補が常務委員入りしなかった。このことは、19期の任期が終了する2022年秋まで、習近平のリーダーシップはレームダック化することなく強力なまま保持されることを意味するだけでなく、22年以降も習近平が最高指導者のポジションを維持し続ける可能性を示唆する。
第四は、中央軍事委員会の人数が11名から7名に減少し、そのほとんどもやはり、習近平に近いと目される人物によって占められたことである4。第二世代の共産党指導部の「核心」たる鄧小平が、総書記ではなく中央軍事委主席の職位を確保することをその権力の根拠としたこと等に見られるように、共産党のリーダーのパワーの強弱は、暴力装置の掌握度に直接関係している5。2016年1月までに基本的に完成した軍隊改革によって、中央軍事委員会の各部門に対する統制権が強化されていること、および2018年1月より、国内治安を維持するためのもう一つの暴力装置である人民武装警察が中央軍事委の単独管轄下に置かれたことも加味すれば余計6、今回軍事委内において習近平がさらに大きな影響力を確保した事実は重要である7。
(2)習近平の権力に対する制約を示唆するもの
他方、修正『党規約』の条文、および新中央指導部の構成は同時に、最高指導者による権力行使の裁量、およびその権力の際限なき強化を制約する諸要素が、過去の政権から引き続き存在していることを示している。
第一に、修正『党規約』は、「改革開放」以降に具体化された、最高指導者個人による専横を防ぐため諸規定を保持している。その一つは、『党規約』総鋼に、「党の根本的な組織原則」として「民主集中制を堅持する」ことが明記されていることである。「民主集中制」という原則は、党の中枢における政策討議・決定を「集団」によって行うということを含意する。そのことは、18期6中全会(2016年10月)で採択された「新情勢下における党内政治生活に関する若干の准則」に、「集団領導を堅持し、集団領導と個人分業責任を結合することは、民主集中制の重要組成部分である」ことが記されている点からも明らかである8。
『党規約』の第二章「党の組織制度」は、この点に関してより具体的な規定を設けている。すなわち、「すべての重大問題は集団領導、民主集中、個別準備、会議決定の原則に従い、党の委員会の集団討論によって決定されねばならない」(10条(5))こと、「党はいかなる形式の個人崇拝も禁止する」(10条(6))こと、「党組織が討論し決定する問題は、必ず少数が多数に服従する原則を執行しなくてはならず、重要問題を決定する際、必ず表決を行わなくてはならない」(17条)こと9、「いかなる党員も、職務の高低を問わず、重大問題を個人で決定してはならず…いかなる領導者も個人専断を実行し、個人が組織を凌駕してはならない」(17条)ことが明記されている。
「個人崇拝の禁止」に関して、それが現実に守られていることは、貴州省黔西南自治州の機関紙『黔西南日報』(11月10付)が、習近平の肖像の下に「偉大な領袖習近平総書記」と記したところ、数日後にその日の新聞がウェブ・サイト上から削除されたというエピソードに見て取れる。報道によれば、削除は、「偉大な領袖」という文革期の毛沢東に対する個人崇拝を想起させるこの文言を使用することを、上級政府が禁じたためであった10。
また、やや細かいが、「中央委員会総書記は中央政治局会議および中央政治局常務委会議を招集することに責を負い、ならびに、中央書記処の工作を取り仕切る(中国語では[主持])」(23条)という12全大会(1982年)以来の文言が維持されている。12全大会当時の胡喬木(政治局委員・当時)の説明によれば、政策の決定を行う両会議における総書記の権限を「取り仕切る」ことではなく「招集する」こととしたのは、「個人による過分な集権と専断を再度発生させないようにするため」である11。
これらは、民主集中制および集団領導制の精神が根本から揺らいでいるわけではないことを示しており、額面通りに実施されるなら、政治局ないし政治局常務委員会における政策形成の際も、習近平の独断によって決定が成されることは(緊急時を除いて)ない12。
第二に、最高政策決定機関たる政治局常務委員会(7名)のレベルで見れば、その過半数は、直接的に習近平人脈と目される人物によって固められているわけではない。上記の通り、栗戦書、趙楽際は、その経歴や出身地から言って習近平と近い関係にあると見られる一方、残りの4名は、いずれも習近平と対立関係にはないとはいえ、習近平に対し個人的に忠誠を誓う者であるとは考えにくい。この点についての評価は「派閥」分析を得意とする観察者や研究者の間でも一致している13。このような見立てが正しく、常務委員会において「習派」が「単独過半数」を形成できてないのだとすれば、そのことが含意するところは(政治局レベルの人事配置よりも)大きい。常務委員会は、1~2週間に一回程度の頻度で会議が開催され、日常的に政策形成がなされ最高権力機関であり、同レベルおいても当然、「少数が多数に服従する」原則が適用されることになるからである。むろん、栗戦書、趙楽際以外の常務委も、政策選好の面で習近平と矛盾を抱えているわけではなく、習の意向が覆される局面は決して多くはないだろう。だが少なくとも、現在の常務委員会は、習近平の意向であればすべてまかり通るような構成にはなっていない。
第三に、『党規約』において新たに党の行動指針となった「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」は、鄧小平の影響を色濃く残している14。15全大会における江沢民(総書記・当時)の報告に明示されている通り、「中国の特色ある社会主義思想」の「主要な創立者は鄧小平」であり、それは「鄧小平理論」そのものである15。習近平が掲げた「思想」は、この鄧小平が打ち立てた理論に「新時代」を加えたにすぎず、その意味において習近平は(毛沢東や鄧小平、あるいは江沢民、胡錦濤とも異なり)、彼独自の創意によって新たなコンセプトを打ち出したとは言えない16。習近平の名を冠することと、習近平独自の文言(例えば「治国理政」)を採用しないことは、トレードオフの関係にあったとみることもできるかもしれない。
また、「新時代」が強調された一方で、中国が「社会主義初級段階」にあるという認識が維持されたことからも、同様の示唆を得ることができる17。13全大会の報告によれば、「社会主義初級段階」とは、中国のような「生産力が遅れている」社会主義国家が経るべき特有の発展段階を指す18。他方、「新時代」は、「“遅れた社会生産”はすでに実際に符合しなくなった」ことを意味する19。したがって、「社会主義初級段階」と「新時代」は本来的に矛盾する。それにもかかわらず、「社会主義初級段階」という自己認識が維持されるのは、この段階が少なくとも100年(1950年代半ばから数えて100年)続くという鄧小平の構想20との整合性が重視されたからであると考えられるが、より根本的には、その放棄が、現在の党の基本路線(経済建設を中心とし、四つの基本原則を堅持し、改革開放を堅持し、自力更生を行い、苦しみに耐えて新たな事業を開拓する)の放棄を直接意味することにつながり得るからである。13全大会以来、『党規約』に定められた「党の基本路線」には必ず「中国共産党の社会主義初級段階における」という前段がつく。つまり、「社会主義初級段階」は、現在の党の基本路線の前提であり、根拠である。この党の基本路線を定めたのは鄧小平であり21、したがって「社会主義初級段階」の終焉は、鄧小平路線の終焉と同義となる。習近平はおそらく、鄧小平に代わって党の基本路線を定めるに足る権威を獲得しているわけではなく、ゆえに「新時代」とは矛盾する「社会主義初級段階」という自己規定が保持されることになったのだと考えられる。
小括―習近平の権力の「均衡点」
習近平の権力をめぐる上記の二つの側面を踏まえた上で、その権力の「均衡点」を一言で表せば、「集団領導制下の『核心』」、ということになろう。2016年の18期6中全会において習近平の党中央の「核心」たる地位が公式に認知されたこと、および、上述した19全大会の結果は、習近平の権限が、少なくとも前任の胡錦濤を大きく上回るものであることを明示した。他方で、これも上記した通り、政策決定過程における民主集中制、集団領導制は揺らぐことなく堅持されている。
より具体的には、「集団領導制下の『核心』」が有する権限は以下のようなものである。すなわち、胡鞍鋼(清華大学国情研究院院長)らによれば、政策決定に関わる制度としての「核心」は、「領導集団の成員の間で意見の分岐が存在し、決定を下すことが難しい特殊な情勢において、成員の意見を集約し、最終的な決議を形成する」権限を有する22。
つまり、中央の日常的な政策決議は、常務委員、政治局員ないし各種重要領導小組の成員との討議、合意形成、表決のプロセスを経て形成されることになるが、成員間の意見の分岐が激しく、合意形成が困難である特殊な情勢下において、習近平は、政策決定の遅滞や無実化を回避するための最終的な議決権を行使し得る。
したがってその権限は、「特殊な情勢」以外においても事実上の「最終決定権」を有した1957年以降の毛沢東期における党主席と23、「特殊な情勢」下においても他の常務委と同じ1票の表決権を有するにすぎなかった胡錦濤期の党総書記の中間に位置すると言えよう。
ではなぜ、習近平の権力は、このような両義性を抱えるものになっているのか。この点を理解する鍵は、次稿(下)で論ずるように、習近平の個人的資質や性格よりも、「歴史」にあるだろう。
1 とりわけ、以下の論説によく整理されている。山口信治「中国共産党第19回全国代表大会の基礎的分析:①新時代の幕開けを宣言した習近平」NIDSコメンタリー第62号(2017年);山口信治「中国共産党第19回全国代表大会の基礎的分析:④習近平政権の確立と課題」NIDSコメンタリー第66号(2017年)。
2 「新時代呼喚更平衡充分的発展(経済熱点・新時代看新発展①)-訪中共中央党校辛鳴」『人民日報』2017年10月30日。
3 中沢克二監修「習近平政権 権力の系譜」『日本経済新聞』2017年9月20日公開、11月6日更新、https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/chinese-communist-party-leaders/(最終閲覧:2018年1月15日)。なお、ウィリー・ラムの見立てでは、李鴻忠、陳全国がこのリストに加わり、王晨が外れる。鄧聿文の見立てでも、王晨が外れる。Willy Wo-Lap Lam, “Has Xi Jinping Become ‘Emperor for Life’?,” China Brief, Vo.17, Issue 14 (Nov. 10, 2017); 鄧聿文「習家班選人的四個原則」『鈕約時報(The New York Times)中文網』2017年11月2日、https://cn.nytimes.com/opinion/20171102/deng-yuwen-on-xi/zh-hant/(最終閲覧:2018年1月15日)。
4 杉浦康之「19回党大会における習近平の軍掌握と人民解放軍の行方」『東亜』No.606(2017年12月号);山口信治「中国共産党第19回全国代表大会の基礎的分析:②習近平強軍思想」NIDSコメンタリー第63号(2017年); Willy Wo-Lap Lam, “The Irresistible Rise of the “Xi Family Army,” China Brief, Vo.17, Issue 13 (Oct. 20, 2017).
5 阿南友亮『中国はなぜ軍拡を続けるのか』新潮社、2017年、109、163頁。
6 杉浦康之「中国人民解放軍の統合作戦体制-習近平政権による指揮・命令系統の再編を中心に―」『防衛研究所紀要』第19巻第1号(2016年12月)。
7 今回の修正『党規約』に「軍事委員会主席責任制」が明記されたこともまた、軍事委内において習近平が突出した権限を獲得したことを示している。山口信治「中国共産党第19回全国代表大会の基礎的分析:②習近平強軍思想」NIDSコメンタリー第63号(2017年);杉浦康之「19回党大会における習近平の軍掌握と人民解放軍の行方」『東亜』No.606(2017年12月号)。
8 「関於新形勢下党内政治生活的若干准則(全文)」『新華網』2016年11月2日、http://news.xinhuanet.com/politics/2016-11/02/c_1119838382_3.htm(最終閲覧:2018年1月15日)。
9 なお、ここでいう「表決」は、「多数決」と同義ではない。『党規約』の17条には、「重要問題を決定する際、表決を行わなくてはならないが、少数の異なる意見についても真剣に考慮しなくてはならない」こと、「重要問題において論争が発生し、双方の人数が接近している場合、緊急の情況下では多数の意見に基づいて執行しなければならないが、それ以外は、決定を暫時遅らせ、さらに一歩調査研究を行い、意見を交換し、その上で再度表決すべきである」ことが記されている。「民主集中制」における政策決定の原則の一つは「熟議」であり、ゆえに、異なる意見を無視するのではなく、十分な議論を通してコンセンサスを形成することが目指される。「表決」は、原則上、こうした合意形成のプロセスの後に行われる。
10 「未談国是:個人崇拝成風?中共緊急出文遏制」『多維新聞』(2017年11月19日);「黔西南州接緊急通知 撤『偉大領袖』肖像」『明鏡網』(2017年11月20日)。なお、同じく報道によれば、11月17日に新華社が発布した長文の文章「習近平:新時代的領路人」は、習近平に関わる称号をあらかじめ列挙することで、「偉大な領袖」を含むその他の称号が使用されることを防ぐためだという。「習近平:新時代的領路人」『新華網』2017年11月17日、http://news.xinhuanet.com/2017-11/17/c_1121968350.htm(最終閲覧:2018年1月15日)。
11 「胡喬木同志就党章修改問題答新華社記者問」『人民日報』1982年9月14日。
12 『党規約』第17条には、「緊急を要し、個人が決定を下さねばならない場合、事後に迅速に党組織に報告しなければならない」ことが記されている。
13 チェン・リ(ブルッキングス研究所研究員)や章立凡(歴史学者)は、常務委員人事については派閥均衡的であったと指摘している。ただし、むろん、「派閥」に対する配慮が常務委の構成を決定づける重要な要因であったかどうかについては、引き続き慎重な分析が求められる。Cheng Li, “The paradoxical outcome of China’s 19th Party Congress,” Brookings (Oct. 26, 2017) https://www.brookings.edu/blog/order-from-chaos/2017/10/26/the-paradoxical-outcome-of-chinas-19th-party-congress/ (最終閲覧:2018年1月15日);「中共新政治局常委揭暁 集体領導或被削弱」『BBC中文版』2017年10月25日、http://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-41752378(最終閲覧:2017年12月26日);鄧聿文「習家班選人的四個原則」『鈕約時報(The New York Times)中文網』2017年11月2日、https://cn.nytimes.com/opinion/20171102/deng-yuwen-on-xi/zh-hant/(最終閲覧:2018年1月15日)。
14 この点はミラーによっても指摘されている。ミラーによれば、「習近平は、鄧小平的制度主義から逸脱しているのではなく、むしろそれに忠実である」。Alice Miller, “The 19th Central Committee Politburo,” China Leadership Monitor, No. 55 (Jan. 23, 2018), p. 11. 筆者はミラーの見解に賛同するが、ミラー論文と同じ巻号に掲載されたフュースミス論文は、むしろ鄧小平時代との断絶を強調している。この差異は、一線で活躍する中国研究者にとっても、習近平の「権力」の現状を評価することがいかに困難な作業であるかを示唆している。Joseph Fewsmith, “The 19th Party Congress: Ringing in Xi Jinping’s New Age,” China Leadership Monitor, No. 55 (Jan. 23, 2018).
15 「高挙鄧小平理論偉大旗幟把建設有中国特色社会主義事業全面推向二十一世紀」(1997年9月12日)中共中央文献研究室編『十五大以来重要文献選編 上』人民出版社、2000年、9頁;陳俊宏「馬克思主義中国化的両次歴史性飛躍」『中国共産党新聞網』2012年、http://theory.people.com.cn/n/2012/1018/c350436-19312396.html(最終閲覧:2018年1月17日。
16 章立凡が述べたとされるころによれば、「中国の特色ある社会主義」は新しいコンセプトではなく、それに「新時代」を付け加えただけでは、理論的なイノベーションとは言えない。Willy Wo-Lap Lam, “Has Xi Jinping Become ‘Emperor for Life’?,” China Brief, Vo.17, Issue 14 (Nov. 10, 2017).
17 山口信治「中国共産党第19回全国代表大会の基礎的分析:①新時代の幕開けを宣言した習近平」NIDSコメンタリー第62号(2017年)。
18 「沿着有中国特色的社会主義道路漸進」(1987年10月25日)中共中央文献研究室編『十三大以来重要文献選編 上』人民出版社、1991年、12頁;郭飛「牢牢把握社会主義初級段階這個最大国情(深入学習貫徹習近平同志“7・26”重要講話)」『人民日報』2017年8月31日)。
19 冷溶「正確把握我国社会主要矛盾的変化(認真学習宣伝貫徹党的十九大精神)」『人民日報』2017年11月27日。
20 李中傑「鄧小平与社会主義初級階段的基本路線」『中共党史研究』2004年第5期、11頁。
21 李中傑「鄧小平与社会主義初級階段的基本路線」『中共党史研究』2004年第5期、14頁。
22 胡鞍鋼・楊竺松『創新中国集体領導体制』中信出版集団、2017年、8頁;李海青「六中全会是中央治国理政方略的深度推進」『領導科学論壇』2017年第1期、9頁。同じく、房寧(中国社会科学院政治学研究所所長)によれば、「民主集中制の制度配置としての核心の含意」は、「党中央ないし党の領導層の間で重大問題について論争があり、意見の分岐が存在している情況下」において、「党内において受権された総責任者が最終決定を下し、それを全党の意志とする」点にある。房寧「政治核心是党的民主集中制的重要表現」『経済導刊』2016年12月、16頁。
23 王春璽「鄧小平対建立中共中央総書記制与集体領導体制的貢献」『政治学研究』2008年第6期、74-75頁他。