※この連載(習近平政治の検証)は、習近平政権前半期(第18期)の政治運営を総括し、さらに今後を展望するための視座を獲得しようとするものである。
2012年11月17日、中国共産党政治局第1回集団学習会1において、中国共産党のトップに就任したばかりの習近平は、「腐敗問題がますます深刻化すれば、最終的には必ず党の滅亡、国の滅亡をもたらすことになる」との認識を示した上で、現在の中国の状況について、「ここ数年、わが党内で発生しているひどい紀律違反事件は、その性質が悪辣であり、政治的影響も極めて深刻で、人の心を揺さぶるものがある」ことを述べ、腐敗を取り締まることの緊要性を強調した2。その約2ヵ月後、習近平は第18期中央紀律検査委員会第2回全体会議(18期中央紀委2回全会)において、「トラ」(高級幹部)も「ハエ」(下級幹部)も一緒にたたく大規模な「反腐敗闘争」に取り組む決意を明らかにした3。
その後「反腐敗闘争」が厳格かつ大々的に実行されていることは周知のとおりである。2016年末までにこのキャンペーンの中で摘発された人数はすでに100万人を優に超えている。その中には、周永康・前中国共産党常務委員会委員、徐才厚・前中央軍事委員会副主席、令計劃・前統一戦線部部長、郭伯雄・前中央軍事委員会副主席、及び周本順・河北省党委書記らに代表される「大トラ」(省・部級以上の幹部)200人以上が含まれる4。
では、習近平政権はなぜ、これほど厳格な「反腐敗闘争」を実施しなければならなかったのか。本コラムでは、「反腐敗闘争」の定義を確認した上で、それが実施される背景状況を検討することを通して、習近平の「反腐敗」の目的を明らかにする。
1.「反腐敗」とは何か
最初に指摘すべきは、「反腐敗闘争」とは、「党風廉政建設及び反腐敗闘争」の略称に過ぎないということである。人民共和国期を通して、とりわけ江沢民政権期以来度々強調されてきた「反腐倡廉(腐敗に反対し、清廉を唱える)」建設において、党の「作風(仕事に対する姿勢)」の改善は主要な目的として位置づけられており、明確な違法行為としての収賄や汚職の摘発は、その一部を構成するものに過ぎなかった5。共産党は、建党以来、党員の思想や「作風」を点検・改造するための「整風」運動を繰り返してきたが、「反腐倡廉」も「反腐敗闘争」も、実際のところ、汚職行為の摘発運動というより、この「整風」運動の現代版として捉えられるべきものである。現代において「整風」よりも「反腐倡廉」や「反腐敗闘争」といったワードが多用されるのは、市場経済の浸透とともに増加した党員・幹部の腐敗行為が民衆の不満の最大の焦点となり、それが党員・幹部に関わる問題の一つの象徴として捉えられるようになっているからであろう6。いずれにせよ、いわゆる「反腐敗闘争」における紀律検査・監察機関の摘発の対象には、一般的にイメージされる腐敗行為、すなわち経済的な利益を不当に得る収賄行為に限られるのではなく、党の紀律に対する違反行為も含まれることになる。
では、党の紀律に違反する行為とは何か。2015年10月に公布された改定「中国共産党紀律処分条例」によれば、それは主として、「政治紀律」、「組織紀律」、「廉潔紀律」、「大衆紀律」、「工作紀律」、「生活紀律」の「六大紀律」によって構成される7。このうち、最も重視されるのは「政治紀律」である。習近平は、「党の紀律を厳正にするということはすなわち、主として政治紀律を厳正にするということである」とした上で、「党の政治紀律を遵守することの最も核心的なことは、党の領導を堅持し、党の基本理論、基本路線、基本綱領、基本経験、基本要求を堅持し、党中央との高度の一致を保持し、中央の権威を自覚的に維持するということである」と述べる。また、「組織紀律」違反行為には、「上級の党組織が決定したことを執行しない、あるいは勝手に改変すること」が含まれ、「工作紀律」違反行為には、「党と国家の方針・政策および決定・差配を伝達・貫徹せず、検査・督促しないこと、ないし、それらに背く決定を下すこと」が含まれる。これらの規定から見て取れることは、紀律違反行為の摘発は、狭義の腐敗行為だけでなく、下級幹部による中央ないし上級党組織の指示・命令からの逸脱行為(=「エージェンシー・スラック」8 )を広く摘発することを目的としている、ということである。
さらに注目すべきは、習近平政権下における「反腐敗闘争」の実践は、その重点が後者の方、すなわち党の紀律に違反する行為の摘発にあることを示している。下図は、胡錦濤政権期から現在(2016年)までの、党紀律違反を理由に紀律監察機関によって摘発された人数と、収賄行為の廉で検察機関によって立件された人数の変遷を示したものである。
出所:中央紀律検査委員会全体会議における報告(各年度)及び「最高人民検察院工作報告」各年度
図に明らかなように、収賄行為の廉で立件された人数は、習近平政権期に入って確かに増加傾向にあるが、それほど大きな増加率を示しているわけではない。他方、習近平政権期に入った2013年以降、極めて顕著な増加率を示しているのは、党紀律違反摘発者の数である。後者の増加率は、2014年は27.5%、15年は44.8%、16年は24%に達している。
このように習近平政権下における「反腐敗闘争」の焦点は明らかに、狭義の汚職不法行為よりも、党紀律違反行為の摘発にある。その目的はおそらく、汚職・収賄行為を撲滅することに加えて、党の一体性を損ねる行為ないし「エージェンシー・スラック」を抑制することにある。
2.なぜ「反腐敗」か
次期総書記就任が内定していた習近平は、2011年春に中央党校において行った講話において、「幾つかの地方、部門及び単位は、中央の方針・政策及び重大差配に対し、口頭で述べ、文件に記すのみで、貫徹履行が不十分であり、中央が再三にわたって命令し警告していること、明文を持って禁止していることに対して、依然として一向に意に介さず自分のやり方を貫き、何度禁じても止めない」と述べている9。こうした、下級幹部による中央の指令からの逸脱行為の蔓延が、大規模な「反腐敗闘争」の背景にあることは明らかである。事実、「反腐敗闘争」の実施を明らかにした18期中央紀委2回全会において習近平は、「地方と部門の保護主義、本位主義を防止・克服せねばならず、“上に政策があり、下に対策がある”ことを絶対に許さず、命令があっても実行しない、禁止されても止めないことを絶対に許さず、中央の政策・手配を貫徹・執行する中で、これを割り引くこと、選択的に行うこと、及び適当に融通を利かせることを絶対に許さない」ことを命じている10。
ではなぜ、習近平政権下において、下級幹部による逸脱行為が重大な問題として取り上げられ、またその是正が急がれるのか。
(1)「官商一体」構造の解体
最も重要な背景の一つは、経済発展パターンの転換が、とりわけ2008年の金融危機以降、喫緊の課題と見なされていることである。
「地方政府コーポラティズム(Local State Corporatism)」等の言葉で表現されてきた11、地方党・政府幹部と地元企業が一体となって地域経済を運営する従来の「官商一体」の構造は、腐敗の蔓延と表裏一体であった。とりわけ私営企業や外資企業は、当地で事業を展開するにあたり、地元政府の許可を取得する必要があり、またそのための土地を確保する必要がある。資金が不足していれば、優先的な融資や様々な保護を受けられるよう地方政府の支援を得なければならない12。この過程で、多くの地方幹部は多額の賄賂を受け取り、その見返りとして企業に特別な支援や保護を与えたのである13。
むろん、巷間指摘されてきたように、こうした「官商一体」構造は同時に、中国の急速な経済発展の動力源でもあった。地方幹部の昇進・昇給(ないし私益)に対するインセンティブと、企業家の利潤最大化に対するインセンティブを有機的に結び付けたということ以外に、市場が依然発展途上にある段階において、政府の積極的介入が、企業経営に必要な資源のスムーズな配置を補完する効果を発揮してきたということも、事実として指摘できよう14。
ただし、こうした「官商一体」構造が経済発展に貢献するのは、労働力や土地などの生産要素の大量投入による粗放的な経済発展方式が有効な限りにおいてである。供給能力過剰や環境汚染等々の問題が深刻化する中、市場メカニズムの再活性化が持続的経済成長のために不可欠とみなされるにつれて、「官商一体」構造は一転して、経済発展にネガティブに作用する要素として認識されるようになっていった。同時に、消費需要拡大のため、政府の職責の重点を、地域の経済発展から、社会福祉などの公共サービスの提供に再度振り向けることで、民生の安定・改善を進めることが急務とされた。胡錦濤政権以来、政府「職能転換」が本格的に追及されてきたのは、こうした目指すべき経済発展パターンの転換にも起因している15。
だが問題は、この「官商一体」構造の解体が、地方党・政府による事実上の政策軽視や不作為に直面し、遅々として進まなかったということである。中国社会科学院のボードメンバーであった張卓元が指摘するように、地方幹部にとって、地域経済に介入するための権限や地元企業との関係は、自身の業績を高め、昇進を獲得する手段であると同時に、私的な経済的利益を得る重要な手段であっため、彼らはこうした「既得権益」を容易に手放そうとはしなかった16。
とりわけ2008年の世界金融危機以降、経済発展パターンの転換がさらに喫緊の課題と認識される状況下において、こうした状況を放置するという選択肢は、もはや指導部には存在しなかった。それゆえに、習近平は、総書記就任とほぼ同時に、「反腐敗闘争」を大々的に展開することになるのであり、その主たる目的の一つは、下級の党・政府幹部の中央の指令からの逸脱を厳しく規制し、「官」と「商」の結びつき(=癒着)を切り離すことで17、経済発展パターンの転換を前に進めることにあったといえる。この点、18期中央紀委2回全会において王岐山は、「党の路線・方針・政策と決議の執行状況を検査することは各級紀律検査委員会の重要な職責である」とした上で、「科学的発展観という主題と経済発展方式の転換を加速させるという主線を念頭において、…経済構造の戦略的調整への注力を増大させること、…民生を保障・改善することなどの重大決定の執行状況に対する監督検査を重点的に展開しなければならない」ことを命じている18。
(2)党・政府―大衆関係の改善
同時に、「反腐敗闘争」は、とりわけローカル・レベルにおいて党・政府と大衆の間の関係の悪化している情勢下において(「大衆路線」参照)、これを改善するための重要な手段としても位置付けられている。
2013年5月9日に中共中央の名義で公布された「全党が党の大衆路線教育実践活動を深く掘り下げて展開することに関する意見」は、「人民大衆の中での党のイメージを毀損し、党と大衆、幹部と大衆の関係を深刻に損ねている」原因は、「四風」及びそれから派生した各種の問題、すなわち、理想信念の動揺、大衆からの乖離、派手な浪費、そして堕落腐敗等にあるとした19。習近平によれば、こうした問題が解決されなければ、「人民大衆と疎遠になり、党風政風が傷つけられ、最終的に党の先進性と純潔性が深刻に毀損され、党の執政基盤と執政地位が深刻に損なわれる」ことになる20。
このような認識に基づけば、共産党体制の長期安定を図るためには、幹部の作風の問題、とりわけ「四風」の問題を必ず是正しなければならない、ということになる。前期の通り、これは、「大衆路線教育実践活動」の課題であると同時に、「反腐敗闘争」の重要な課題でもある。習近平曰く、「形式主義、官僚主義、享楽主義、奢侈の風に反対したのは、すなわち腐敗に反対し廉政建設を唱える上でその一つの重点を提供するためであり、また、党の執政の大衆的基盤を打ち固める上で一つの切り口を提供するためである」21。
要約すれば、「反腐敗闘争」は、とりわけローカル・レベルにおいて悪化し続けた民衆の党と政府に対する心象と信頼を回復し、以て共産党政権の大衆的基盤を再建し、強固にするための(おそらく「大衆路線教育実践活動」よりも強力な)政策的手段の一つでもある。この際、狭義の汚職腐敗行為は、「四風」から派生した具体的な表象の一つに過ぎない。習近平が述べている通り、「反腐敗闘争」とは、「党が終始しっかりと人民に依拠していなければならず、終始人民大衆との血肉関係を保持していなければならず、一刻たりとも大衆から乖離してはならない」という極めて広大な「核心的問題」を「成し遂げる」ことを究極的な目的として展開されているものである22。
おわりに
本稿では、「反腐敗闘争」の重点が、明確な違法性を伴う収賄行為を立件することよりも、党中央や上級党組織の方針や命令から逸脱する行為を摘発することにあること、及び、その目的は、下級幹部に対する監視と統制を強化し、以て経済発展パターンの転換と党・政府―大衆関係の改善という二つの最重要課題に対処することにあることを論じてきた。むろん、この結論は、「反腐敗闘争」とはすなわち「権力闘争」であるといったおそらく最もコンベンショナルな解釈を否定するものではない。習近平政権期の「反腐敗闘争」のもう一つの特徴は、高級レベルの官僚の摘発人数が飛躍的に増大していることにも見て取れるからである23。ただし、これまでの「反腐敗闘争」の展開をよりローカルな視点から実態的に見たとき、その主たる対象が「エージェンシー・スラック」にあることは明らかであり、「権力闘争」のみに焦点を狭めることでこの点を見失うべきではない。
では、この「反腐敗闘争」はいつまで続くのだろうか。この政策の目的が党中央の方針から逸脱するあらゆる行為の取り締まりにあり、「一刻たりとも大衆から乖離してはならない」という理想を成し遂げることにあるのであれば、永遠に終わりを告げることはないだろう。ただし、「反腐敗」は、今後、これまでのキャンペーン・スタイルから、法や制度に依拠したものに徐々に移行していくだろう。2017年1月に開催された第18期中央紀委7回全会は、「反腐敗闘争が圧倒する態勢が形成されつつある」との昨年度会議の情勢判断を、「圧倒する態勢が既に形成された」との見解に更新し、18回全大会以来のその成果を大いに強調した。中国政法大学副学長である馬懐徳によれば、これは、「反腐敗闘争」が「カギとなる転換点に到達」し、今後「量から質へと転換」することを意味しているという24。2016年10月の18期6中全会における「中国共産党党内監督条例」の改定や、2018年3月の全国人民代表大会において採択される予定の「国家監察法」制定と「国家監察委員会」25設立は、「反腐敗」が「法治化」・「制度化」の段階に入ったことを象徴的に示している。こうした「法治化」・「制度化」が進展すれば、下級の党・政府幹部に対する監視・管理体制は大いに強化されることになる。その場合、下級の党・政府幹部が、中央が決定した政策や法規を超越した行動をとることはより困難になるだろう。
ただし、それが額面通りに遂行されることが、経済発展パターンの転換と党・政府―大衆関係の改善という喫緊の課題にポジティブに作用するとは限らない。
第一に、経済開発に介入する多くの手段を喪失し、地域のGDPの成長という明確で分かりやすい目標を失い、かつ私益を獲得する機会を喪失した地方幹部たちは、行政に対するインセンティブを大きく減退させることになる。それは、次なる問題として、すでに研究者や政策担当者によって広く指摘されているように、地方幹部の怠惰や不作為の問題を発現させることになる26。こうした状況が蔓延すれば、民生の改善は進まず、民衆の信頼の回復も望めないことになる。習近平政権は、幹部に対する監視と制約を強化する一方で、彼らが「大衆路線」の原則に沿って行動するための新たなインセンティブを(民主的な選挙を導入する以外の方法で)いかにして付与するか、という問題にいずれ対処せざるを得なくなるだろう。
また、より長期的には、「官商一体」構造の解体によって党・政府からの自立を強めることになる企業家たちを、共産党政権の支持者としていかにして繋ぎ止めて行くかということが大きな課題として立ち現れてくる可能性がある。ハンチントン(S.P.Huntington)によれば、近代化途上にある国家において腐敗は、新興経済勢力を、(彼らの政治参加を包摂するための制度建設が遅れている状況下において)非正規的な方法で政治システムの中に吸収することで、彼らがシステムそのものに敵対することを予め防ぐ効果を発揮する場合がある27。ツァイ(Kellee S. Tsai)らの議論に依拠すれば、中国において私営企業家たちが、共産党体制に対抗する民主化要求勢力とならなかったのは、彼らの利益が、地方政府の柔軟な政策実行により一定程度満たされてきたからである28。こうした解釈が正しいなら、「官商一体」構造は、(粗放的)な経済発展を促進してきたのみならず、共産党体制の安定にも一定の貢献を果たしてきたということになる。「反腐敗」は、これまで経済発展の恩恵に十分にあずかってこなかった人々の不満を緩和する上で一定の作用を発揮するだろうが、その一方で、経済発展の主役となってきた人々を党・政府から引き離すことになるだろう。民衆の政治参加を可能にする制度が依然として整備されていない現状において、それは、一党独裁体制の安定にとってより危険な集団を「野に解き放つ」ことを意味するかもしれないのである。
※本レポートは、『海外事情』2016年1月号に掲載された論説「『反腐敗』とは何か―ローカル・ポリティクスの視点から―」を要約し、かつ大幅な加筆・修正を加えたものである。本コラムの内容をより掘り下げた分析は、ぜひ原文を参照されたい。なお、本レポートの掲載を許可していただいた拓殖大学海外事情研究所『海外事情』編集部の方々に、記して感謝申し上げる。
(2017-03-31掲載、2017-11-10改稿)
1 中国共産党政治局集団学習会は、共産党中央委員会政治局のメンバーが集まり、時々の重要問題について、全国から当該分野の専門家を招いて討論する場である。2002年に胡錦濤政権の発足とともに開始され、以降月に1回から2回のペースで定期的に開催されてきた。習近平政権期に入ってもこの会合の形式は引き継がれており、やはり高い頻度で開催されている。中国共産党の最高レベルの幹部が一堂に会し議論する場であることから、その意義は単なる「学習」に留まらず、政策形成過程の一環節を成しているものと考えられる。
2 「中国の特色ある社会主義の堅持と発展をしっかりと中心に据えて第18回党大会の精神を学習・宣伝・貫徹しよう」(2012年11月17日)『習近平 国政運営を語る』外文出版社、2014年、17頁。
3 「権力を制度のオリに閉じ込める」(2013年1月22日)『習近平 国政運営を語る』外文出版社、2014年、432頁。
4 「反腐敗闘争圧倒性態勢已経形勢」『人民日報』2017年1月10日他参照。
5 例えば、仲三員他編『反腐倡廉重在制度建設―胡錦濤在十七届中央紀委五次全会上的講話精神学習読本』中共党史出版社、2010年を参照。
6 約7000人を対象にした『人民論壇』によるアンケート調査の結果によれば、71%が現在の地元政府は「多くの問題に直面し、日増しに弱化している」と回答し、その原因について、70%の回答者が「腐敗現象が深刻である」を選択している。人民論壇“千人問巻”調査組「関於“靠什麼支?基層政権”的調査」『人民論壇』2010年第1期(2010年)、14-15頁。調査は、人民論壇雑誌社が人民網、騰訊網他と協力してインターネット上で実施したもの。総サンプル数は7006人。
7 「中共中央印発≪中国共産党紀律処分条例≫」『新華網』(2015年10月21日)http://news.xinhuanet.com/2015-10/21/c_1116897567.htm(最終閲覧:2017年11月6日)。
8 エージェンシー・スラックとは、本人(Principal)よりも情報面で勝る代理人(agent)が、本人の利益にならない行動をとることを意味する。この場合、統治者の決定を代理的に執行するエージェントが、統治者の示した目的や戦略とは異なる目的を追求することを指す。曽我謙吾『行政学』有斐閣、2013年、22-32頁を参照。
9 習近平「関鍵在於落実」(2011年3月1日)中共中央文献研究室編『十七大以来重要文献選編(下)』中央文献出版社、2013年、197頁。
10 「更加科学有効地防治腐敗 堅定不移把反腐倡廉建設引向深入」『人民日報』2013年1月23日、第1面。
11 Jean C. Oi, “Fiscal Reform and the Economic Foundation of Local State Corporatism in China,” World Politics, Vo.42 (October 1992).
12 周黎安『転型中的地方政府:官員激励与治理』格致出版社・上海人民出版社、2008年、293頁。
13 周黎安『転型中的地方政府:官員激励与治理』格致出版社・上海人民出版社、2008年、291-306頁;汪淑珍・王家峰「地方政府尋租性腐敗現状分析―以江蘇省北部某県為例」『北京科技大学学報』第24巻第3期(2008年9月)他。
14 孫鋼・陸銘・張吉鵬「反腐敗、市場建設与経済増長」『経済学(季刊)』第4巻増刊(2005年10月)を参照。
15 孫剛らは、「初期において腐敗活動に適度に寛容な態度をとり、その後、資本蓄積(社会の生産能力)が一定の水準に達した後、反腐敗の程度をつよめる」ことが、反腐敗と経済発展を両立する最良の方法であると論じている。孫鋼他、前掲論文。
16 張卓元『中国改革頂層設計』中信出版社、2014年、前言。
17 事実、「反腐敗闘争」の「重点領域」として、幹部による「審査・認可部門におけるレント・セッティング及びレント・シーキング、建設・開発プロジェクトへの介入」が挙げられている。国明理他編『党風廉政建設和反腐敗闘争学習読本』人民日報出版社、2015年、17頁。
18 王岐山「深入学習貫徹党的十八大精神,努力開創党風廉政建設和反腐敗闘争新局面」(2013年1月21日)中共中央文件研究室『十八大以来重要文献選編(上)』中央文献出版社、2014年、123-124頁。また、上記した第18全大会における紀律委員会報告も、今後の政策に関する「政治紀律」に関する「建議」の中で、「科学的発展という主題と経済発展方式の転換を速めるという主線をしっかりと念頭に置き、中央の経済社会発展の重大決定・配置の執行状況に対する監督・検査を強化し、各項の目標・任務が必要とされる場所でしっかりと実行されることを確保しなければならない」ことを明確に述べている。「中共中央紀律検査委員会向党的第十八次全国代表大会的工作報告」(2012年11月14日)中共中央文件研究室『十八大以来重要文献選編(上)』中央文献出版社、2014年、61-62頁。
19 「中共中央関於在全党深入?展党的群衆路線教育実践活動的意見」(2013年5月9日)『群衆路線網』http://qzlx.people.com.cn/n/2013/0930/c365007-23090188.html(最終閲覧:2015年12月17日)。
20 習近平「在河北調研指導党的群衆路線教育実践活動時期的講話」(2013年7月11、12日)中共中央紀律検査委員会・中共中央文献研究室『習近平関於党風廉政建設和反腐敗闘争論述摘編』中国方正出版社・中央文献出版社、2015年、76頁。
21 習近平「在十八届中央政治局第五次集体学習時的講話」(2013年4月19日)、中共中央紀律検査委員会・中共中央文献研究室『習近平関於党風廉政建設和反腐敗闘争論述摘編』中国方正出版社・中央文献出版社、2015年、72頁。
22 習近平「在十八届中央政治局第五次集体学習時的講話」(2013年4月19日)、中共中央紀律検査委員会・中共中央文献研究室『習近平関於党風廉政建設和反腐敗闘争論述摘編』中国方正出版社・中央文献出版社、2015年、6頁。
23 佐々木智弘「反腐敗闘争の政治学」『国際問題』第649号(2016年3月)。
24 「開展党風廉政建設和反腐敗闘争不松勁―幹部群衆熱議習近平総書記中央紀委七次全会重要講話」『人民日報』2017年1月9日。
25 国家監察委員会は、おそらく、最高人民法院、最高人民検察院及び国務院と同格の国家機関として、また、(中央軍事委員会同様)中央紀律検査委員会と人員をまったく同じくする「党政合一」の機関として設置されることになる(「反腐敗闘争圧倒性態勢已経形成(在国新?新聞発布会上)」『人民日報』2017年1月10日)。同委員会は、これまで紀律検査委員会、国務院国家監察部、及び人民検察院に分散していた(おそらくは広義の)「腐敗」に対する監視・管理機能を統括し、「公権力を行使するすべての公職人員に対する監察のすべて」を担うことになる(王岐山「推動全面従厳治党向縦深発展 以優異成績迎接党的十九大召開―在中国共産党第十八届中央紀律検査委員会第七次全体会議上的工作報告」(2017年1月6日)『人民日報』2017年1月20日)。
26 近年の「不作為」の問題については、例えば、辻康吾「『軟抵抗』に直面する習近平主席 注目される金燦栄発言」『アジア時報』通巻520号(2016年10月);「習近平氏、国内改革進まず 地方役人が面従腹背」『日本経済新聞 電子版』2016年11月4日(原文はThe Economistに掲載)を参照されたい。
27 Samuel P. Huntington, Political Order in Changing Societies (New Haven and London: Yale University Press, 1968), p. 61.
28 Kellee S. Tsai, Capitalism without Democracy: The Private Sector in Contemporary China (Ithaka and London: Cornell University Press, 2007).