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公開ウェビナー「中国をいかにして核軍備管理・軍縮に取り込むか」

2022-11-18
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米国との戦略的競争を活発化させ、また核戦力の積極的な近代化を推進している中国は、5核兵器国の中で唯一、実質的な核軍備管理に従事していません。中国との戦略・抑止関係が日本にとってもますます重要な課題になっており、またルールに基づく国際秩序が揺らいでいるからこそ、核軍備管理・軍縮の側面からも地域・世界の安定を図る必要性が高まっています。日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター(以下、「当センター」)は、秋山信将・一橋大学大学院教授/日本国際問題研究所 客員研究員、西田充・長崎大学教授をお招きし、公開ウェビナー「中国をいかにして核軍備管理・軍縮に取り込むか」を開催しました。

はじめに秋山教授から、米国は中国が2030年までに1000発の核弾頭を保有するなど今後も核戦力を増強していくことを懸念し、他方で中国は米国との相互抑止を確立すべく、現段階では米国との軍備管理を進めるべきではないと考えているといった状況が説明されました。また、米国に対する核戦力の数的劣勢から、中国は能力に関する透明性措置を受け入れていないと述べました。続いて、西田教授から、米国が中国に対して核軍備管理対話・交渉を求めているにもかかわらず、中国はまずは米露が大幅に核兵器を削減すべきだとして拒否する一方で、5核兵器国(N5)の対話には参加している点が指摘されました。また、中国は、現時点では核兵器の削減など数的な管理には応じないものの、米国は中国との間で核リスクの管理といった広義での軍備管理については進めていく可能性があるとしました。

議論の後半では、2022年8月に開催された第10回NPT運用検討会議における中国の主張について、西田教授、秋山教授からご解説いただきました。西田教授は、中国は従来同様に、①核兵器の先行不使用条約、②無条件の消極的安全保証を他の核兵器国に求めつつ、新たになされた攻勢的な主張として、核共有、AUKUSの下での豪州による原子力潜水艦取得、ならびに核兵器用核分裂性物質の生産モラトリアムに反対したこと、他方で透明性への反対は表向きさほど厳しくはなかったことなどを述べられました。秋山教授は、NPT運用検討会議で中国が核共有について言及したのは新しい点だと指摘し、韓国や日本で核共有をめぐる議論がみられるなか、これを強く牽制することに主眼があったと指摘されました。

最後に、中国を軍備管理に取り込むために何をすべきかが議論されました。秋山教授は、中国にとってのメリットも考える必要性があると述べました。また、中国は日本を核軍備管理に関する交渉相手ではないとみており、だからこそ日本は、米国の抑止の関係を強化することで、米国と同じ視点で中国に軍備管理を働きかけることが求められると論じられました。西田教授は、規範の形成により中国にプレッシャーをかけていくこと、ASEAN地域フォーラム(ARF)など地域の枠組みも積極的に活用して対話や信頼醸成を推進することなど、日本は多層的・重層的な外交を進めるべきだとしました。

議論を受けて、当センターの戸﨑洋史所長をモデレーターに、参加者とのQ&Aセッションが行われ、中国の先行不使用の信頼性・変容可能性、核兵器使用可能性の低減に関する議論のなかで中国にメリットを提示しつつ軍備管理に取り込んでいく可能性などについて、活発な議論が交わされました。