CDAST

経済・技術安全保障ウェビナー・シリーズ 緊急企画「経済制裁:ロシアへの輸出禁止措置等について」(風木淳 経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)

2022-04-15
  • twitter
  • Facebook

ウクライナ情勢は依然として予断を許さない状況が続いています。日本政府は国際社会とともに累次にわたりロシア等に対する経済制裁等を行ってきました。2022年4月15日に開催されたウェビナー・シリーズの『緊急企画』では、風木淳 経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長をお招きして、ロシアへの輸出禁止措置等について御講演いただきました。

はじめに、風木部長は、ロシアによるウクライナ侵略への経済産業省の対応について説明しました。日本政府としては、平成26年のロシアによるクリミア等の「併合」や今回のウクライナ侵略といった経緯を踏まえ、力による現状変更を認めないとの立場から、制裁を含めたロシアに対する措置を講じてきたと述べました。そして、今回の侵略に対する制裁措置としては、日本政府全体の取組として、資産凍結や金融制裁に加え、輸出入に関する制裁を行ったことを報告しました。日本経済への悪影響を最小限にとどめつつ、国際社会と協調し、相手国への影響を最大限にするという基本的な考え方に沿って制裁を実施していると述べました。

続いて、今回の輸出管理による制裁について具体的な措置を解説しました。まず、経済制裁には外国為替及び外国貿易法(外為法)上、国連安保理決議に基づく制裁、有志国による協調に基づいた国際平和のための国際的な努力としての制裁、日本独自の制裁の三つのアプローチがあるとして、今回のウクライナ侵略に対しては国際平和のための国際的な努力を根拠としてG7をはじめとする国際社会と連携してロシアへの制裁を進めてきたと述べました。具体的には、ロシア・ベラルーシ向けの国際輸出管理レジームの対象品目や軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品の輸出禁止措置や、特定団体(軍事関連団体)への輸出禁止措置、ロシアに対する奢侈品の輸出禁止やロシアからの一部物品の輸入禁止措置などを行っていることを報告しました。また、これからの課題として、制裁の迂回防止、諸外国との連携などに努め、現在行っている措置を確実に執行していく必要があることを指摘しました。補足として、外為法や関連政省令等の制裁に関連する条文や制裁対象となった品目・団体のリスト、安全保障貿易管理制度の概要などについて概説しました。

講演後、当センターの髙山嘉顕研究員が、対露制裁に関して日本が米国やEUと協調を進めてきたフォーラムの存在や、今回のウクライナ侵略で形成された対露制裁枠組みとプルリテラルな輸出管理枠組みの構築との関係性、対露制裁におけるシンガポールと台湾の位置づけ等について質問をし、議論を深めました。また、参加者からは、輸出管理項目の選択の基準、対露制裁がもたらしうる逆効果への懸念、対露制裁を実施していない国に生産拠点を持つ企業が今回の制裁に違反しないよう注意すべき点、国際輸出管理レジームの今後の行方、対露制裁とWTOの整合性、対露制裁のエスカレーションの可能性、ウクライナ侵略における出口の見通しについて質問が寄せられ、活発な議論が行われました。