包括的核実験禁止条約(CTBT:Comprehensive Nuclear Test-Ban-Treaty)とは、宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる空間における核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止し、かつ条約の遵守を検証するために国際機関(CTBTO)を設置し、核爆発実験を探知・検証するために必要な検証手段(国際監視制度(IMS:International Monitoring System)、協議及び説明(Consultation and Clarification)、現地査察(OSI:On-Site Inspection)、信頼の醸成についての措置(Confidence Building Measures))を設けた核軍縮・核不拡散条約です。同条約は1996年9月、国連総会において採択されました。
核兵器の開発や改良を行うためには、核爆発実験の実施が必要になると言われており、核爆発実験を禁止することは核軍縮・核不拡散を進める上で重要です。1963年に部分的核実験禁止条約(PTBT:Partial Test-Ban-Treaty)が締結され、核爆発実験禁止のための国際的な取り組みはありましたが、PTBTは地下核実験を禁止対象とせず、また条約の遵守を検証するための措置(検証手段)を設けなかったという問題がありました。
地下核実験を含め、あらゆる核爆発を禁止するCTBTは、1996年の署名開放から25年以上経過した現在、署名国数186、批准国数173を数えるに至っています(最新の批准国は、2022年6月のドミニカ国)。しかし、CTBT発効には特定の44か国すべての批准が必要とされており、米国、中国、エジプト、イラン、イスラエルが未批准であり、またインド、パキスタン、北朝鮮が未署名・未批准のため、未だ条約は発効していません。
現在、北朝鮮は引き続き、核・ミサイル開発を継続しており、また、1998年に核爆発実験を行ったインドやパキスタンも、その後核実験のモラトリアムを宣言し続けていることなどを踏まえれば、依然国際社会のCTBTに対する関心や期待は高く、CTBTが核の拡散防止に重要な役割を担っているといえるでしょう。
また、最終的に世界全体で337か所に設置されるIMSの監視観測所・放射性核種実験施設は、先の福島原発事故や津波等の大規模災害に際して、信頼性の高いグローバルな観測網として、民生面、科学研究面でもその役割と効果が注目されています。