CDAST

【CDASTとは】沿革・概要

2022-07-01
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冷戦終了後の国際社会では、軍縮・不拡散を前進させる機運がかつて無かったほどに高まっています。これは、一つには世界の二極対立をもたらした冷戦構造が崩壊したことにより軍縮・不拡散促進の展望が拡がったこと、また、他方では冷戦構造の崩壊が、逆に、民族対立等の不安定要因を顕在化させ、その解決の一環として軍縮・不拡散促進の必要性が広く共有されるようになったからです。

このような状況に対し、わが国は新たな対応をとらなくてはなりません。それは、具体的には、わが国が知恵を出し、議論をリードして国際社会の合意形成に貢献していくことです。さらに、各種の軍縮・不拡散措置の実施にわが国が積極的に関与していくことです。そのためには、官民に分散している情報、知見、技術等を一同に集積し、総合的な活用を図る必要があります。

以上の背景の下、1995年7月に河野洋平外務大臣(当時)が軍縮業務を円滑に行うための国内体制の強化を提唱し、これを受けて、1996年7月に日本国際問題研究所に軍縮・不拡散促進センター(以後軍縮センター)が設置されました。

設立当初から2003年度末までは、中国遺棄化学兵器回収・処理に関する調査・研究が軍縮センター活動の大半を占めておりましたが、右処理事業が2004年度から本格化することに伴い、軍縮センターによる調査・研究は終了しました。

これに代わって、2002年度から軍縮センターの主要活動となってきたのが、包括的核実験禁止条約(CTBT)国内運用体制の整備・運営です。これは、CTBTの下で国が負う検証制度の整備に関する義務等を遂行するための国内体制です。また、軍縮センターは、日本の積極的な軍縮外交を多方面に渡り支援するために各種の活動を行っています。さらに、新技術が安全保障に与える影響が拡大していることを踏まえ、そうした課題もカバーすべく、2019年7月に名称を「軍縮・不拡散促進センター」から「軍縮・科学技術センター」に変更しました。軍縮センターの主要な活動は以下のとおりです。

1.包括的核実験禁止条約(CTBT)国内運用体制事務局

(1)CTBT国内運用体制の目的

CTBT国内運用体制は、①核爆発実験の識別に資する日本独自の検証システムを整備・運営し、②議定書の附属書に規定された国内10か所の国際監視制度(IMS:International Monitoring System)施設の整備・運用及び必要な技術開発を実施し、③条約が定める現地査察(OSI:On-Site Inspection)にかかわる検証体制整備に貢献することを目的としていて、極めて特殊で専門性の高い知見が必要とされています。軍縮センターは外務省との委託契約に基づいて、この国内運用体制の整備を進めています。

(2)CTBTの検証制度

(ア)CTBT国内運用体制は、事務局を務める軍縮センターと、検証制度を支える2つの国内データセンター(NDC:National Data Centre)との三者が一体となって行っています。CTBTの検証制度は、主として、①地震学的監視、②放射性核種監視、③現地査察(OSI)から構成されていて、①は日本気象協会(NDC-1)に、②は日本原子力研究開発機構(NDC-2)に業務を委託し、③は軍縮センターが担当しています。

(イ)軍縮センターは、CTBTの法的側面及び検証制度の技術的側面の双方についての知識と経験を備えていて、これによりNDC-1、NDC-2と的確な連携を図り、国内運用体制の整備、強化を進めています。

(3)主な活動内容

(ア)現地査察(OSI)

(i)日本政府への支援 CTBTにおけるOSIにおいては、核爆発実験が疑われる事象が発生した場合、①OSIを実施するか否か、さらに、②OSIの実施結果に対して、条約の遵守違反が行われたか否かの判断を行うこと等が求められます。軍縮センターは、CTBTの条約上の解釈や、その運用面での専門的な知識に基づき、日本政府によるOSI実施要請や、OSIの実施結果への判断をサポートするための取り組みを行っています。

(ii)CTBTO準備委員会への貢献 CTBTO準備委員会のCTBT検証体制の整備においては、今後一層の能力構築の促進が求められるOSI分野での技術的・法的・政策的条件について、軍縮センターの研究員が調査・研究を行っています。また、CTBT検証制度整備の実務的な観点からも、OSI運用手引書案の策定や、OSI関連の演習やトレーニングに積極的に参画・貢献し、CTBTO準備委員会のOSI体制整備に寄与しています。

(イ)国内データセンター(NDC):NDC-1及びNDC-2との連携 日本政府に対してCTBT検証制度に関する技術的・専門的な助言を行うために、軍縮センターは、NDC-1及びNDC-2と連携し、それぞれの運営や技術開発に向けた業務の取りまとめを行っています。

(ウ)統合運用試験 地震波形データ及び放射性核種データの解析・評価を暫定運用の中で統一的に行い、国内運用体制の検証能力と実効性を確認し、課題の解明と改良を進めて機能強化を図るための統合運用試験を実施しています。

(エ)北朝鮮による核実験の際の対応 2006年、09年、13年、16年及び17年の北朝鮮による核爆発実験の際には、軍縮センターは、NDCの解析結果を踏まえ、国内運用体制としての評価・所見を速やかに作成し、日本政府に提出しました。

(オ)CTBTO準備委員会の検証技術にかかわる議論のフォロー CTBTの検証制度にかかる個別の専門的事項が協議される作業部会Bに、幅広い知見と経験を有する研究員、専門家を派遣し、幅広く専門的な対応を行い、日本代表団への支援を行っています。また、暫定技術事務局(PTS:Provisional Technical Secretariat)による様々な分野のワークショップ等にも日本の専門家を派遣し、貢献しています。

(カ)国際的議論や技術革新の動きのフォロー CTBTに関する国内外の政府関係者及び有識者の発言、批准に向けた国際動向、核軍縮・核不拡散問題に関する国際動向等についての情報を幅広く入手し、CTBTを巡る現状、課題、今後の見通しなどにつき分析を行っています。また、国内の関係者との間でCTBT検証制度の技術動向についてフォローアップを行っています。

(キ)各国NDCとの交流、協力関係構築 CTBT検証制度の円滑な運用を確保するため、PTSや他の関係国のNDCとの協力関係を構築しています。

2.調査・研究活動

軍縮・不拡散問題や技術と安全保障の問題に関する知識を深めるため、これらを巡る今日的および根源的問題について、国内外の有識者を集めて幅広い調査・研究を行い、問題の解決策について提言しています。また、これらの分野に関する国際会議、シンポジウム、学会をはじめとする諸会合にも当センター所長や研究員が積極的に参加しています。

3.情報発信活動

軍縮・不拡散問題や技術と安全保障の問題に関する情報や知識を広めるため、調査・研究活動の成果を、ホームページなどを通じて積極的に公開・発表するとともに、セミナーやワークショップといった公開イベントを開催しています。

4.人材育成活動

将来の軍縮・不拡散を担う人材を育成すべく、この問題に関心を持ち、将来この分野での活躍(国際機関、政府関係、マスコミ、NGO、研究機関など)を考えている大学院生や若手研究者・実務担当者等を対象に、学界の第一人者や政府関係者を講師に招き、軍縮・不拡散講座を実施しています。

5.交流活動

軍縮・不拡散問題や技術と安全保障に関する問題について、国内外の専門家による講演会・意見交換会を開催し、知的交流を推進しています。