国問研戦略コメント

戦略年次報告2022
第2章 ロシアによるウクライナ侵略と各国の対応

2023-02-14
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2 月に開始されたロシアのウクライナ侵略に対し、西側諸国からの軍事支援を受けたウクライナ軍は夏以降大規模な反転攻勢に出た。ロシアは9月には一方的にウクライナ東・南部 4 州の併合を宣言し、10月以降はウクライナ各都市にミサイル攻撃を行うなど、明確な出口戦略を欠いたまま戦争をエスカレートさせている。

西側諸国は、力による現状変更を許さないとの強い決意の下、共通の価値に基づくG7 や NATO、EUなどの枠組みを通じた団結と協調を深め、対露経済制裁や対ウクライナ支援で前例のない措置を迅速に打ち出した。日本を含む西側諸国の多くは、自国の安全保障政策も大きく転換させている。経済制裁はロシアの政治・社会に短期的には大きな影響を与えておらず、言論統制も相まってプーチン大統領への支持は高止まりし、ウクライナにおける戦争終結への道筋は未だ見通せない。一方西側諸国は、制裁やロシアによる「資源の武器化」もあってエネルギー供給の不安定化やインフレに直面し、内政への影響もみられる中で、対ウクライナ支援の持続可能性と民主主義の強靱性が試されている。多くの途上国は、コロナ禍からの回復途上で生じた紛争を受けて急激に悪化した食糧・エネルギー情勢と先進国の金融引締めの影響に苦しみながら、自国の国益を守ろうとしている。