2020年の中東地域は、諸外国と同様にコロナ感染拡大に見舞われ、この地域の不安定さや脆弱性が顕わとなった。地域における重層的な「力の真空」を背景に、「アラブの春」以降、内戦状態に突入したシリアやイエメン、リビア等を舞台にトルコやサウジ、イラン等の地域大国の主導権争いは続いている。夏以降は、米トランプ政権の仲介の下、イスラエルとアラブ諸国との国交正常化が相次いで実現し、中東の国家関係は、すでに事実上崩壊していた「イスラエル対アラブ」という建前から経済・安全保障を重視する本音の関係へと大きく変わり始めた。イランは、1月にソレイマーニ革命防衛隊司令官の暗殺、11月に核開発のキーパーソンと言われる核物理学者モフセン・ファクリザーデ氏暗殺を経験する中で、米国との対立姿勢や核合意(JCPOA)からの逸脱を加速化させている。一方米国は、対イラン制裁強化や空母のホルムズ海峡派遣などで対抗し、地域情勢は緊迫の度を深めた。
「戦略年次報告2020」の本章は、2月25-27日に開催される第2回東京グローバル・ダイアログ(TGD2)の次のセッションにもリンクしています。
コロナ禍と戦略的変容における中東情勢 | 日時: 2/26(金) 17:00-18:30 |