国問研戦略コメント

理事長メッセージ

佐々江賢一郎(日本国際問題研究所理事長)
  • twitter
  • Facebook

2019年、日本国際問題研究所創立60 周年記念の機会に、各研究会における調査研究活動の成果を反映させつつ、地域情勢の分析や今後の展望について内外に発信する『戦略年次報告』の発表と東京グローバル・ダイアログの開催を開始し、今回で6 回目を迎えます。

前回の『戦略年次報告』はいまや世界は「ポスト冷戦」時代を終えて、米国主導の国際秩序の根幹が脅かされ、ロシアのウクライナ侵略、中東情勢の緊迫化といった事象が発生する「動乱の時代」に入ったと指摘しました。一連の紛争については解決の糸口が掴めず、国際社会は混迷の色を濃くしています。法に基づく国際秩序や国連、G20といった国際的アーキテクチャは機能不全に陥り、核軍縮の推進、AI をはじめとする技術の急速な進化や気候変動への対応など、多国間協力を要する喫緊のグローバルな課題への取り組みも一層の困難に直面しています。こうした中、2024年11月の米大統領選挙の結果、トランプ大統領の復帰が決まりました。2 期目のトランプ政権がどのようにこうした問題に取り組むのか、米国の同盟国・西側主要国やグローバル・サウスと呼ばれる新興国・途上国勢力がいかに対応するかは、今後の推移を丹念に見ていくほかありません。諸問題が山積する中、政策シンクタンクが国際政治を見る「視座」を提供することの重要性が今ほど高まっている時もありません。

当研究所は、こうしたことから、東京グローバル・ダイアログの機会に発表してまいりました『戦略年次報告』を今回から『戦略アウトルック』と名前を変え、これまで以上に今後の展望を描くことに重点を置くとともに、可能な限り各研究員名による発表を促し、より日本に期待される行動や役割について提言することとしました。読者の皆様の議論を喚起することができれば幸いです。

この『戦略アウトルック2025』が各方面で活躍される皆様の国際情勢に対する理解の増進に役立つことを心から願っております。