国問研戦略コメント

戦略年次報告 2019:揺れる国際秩序に立ち向かう新たな安全保障戦略

2019-12-02
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米国の主導の下で形成された第二次世界大戦後の国際秩序は、大小すべての国家が国際法に従うことを前提とし、個人の自由や民主主義、人権、法の支配、紛争の平和的解決、自由貿易などのリベラルな価値を国際社会に普及させてきた。しかし、近年、中国やロシアなど既存の国際秩序に不満を抱える国家は、国際的に確立された規範や制度の一方的な変更や否定を通じて権威主義国家に有利な環境を作り出そうとしている。
米国第一主義を掲げるトランプ政権は、中国やロシアを既存の国際秩序に挑戦する「修正主義国家」とみなし、これらとの戦略的競争を選択した。他方、トランプ政権自身も自国のあからさまな利益の擁護を既存の秩序の維持よりも優先し、貿易不均衡の是正や同盟国による負担の増大を求めている。特に、同盟国の貢献を財政面からのみ評価しようとするトランプ政権の方針は、同盟軽視にもつながり、日米同盟の信頼性をも揺るがしかねない深刻な課題である。