研究報告

「ロシア」研究会令和6年度研究報告書

2025-05-28
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日本国際問題研究所令和5-7年度外交・安全保障調査研究プロジェクト「日本周辺の主要国の国内要因が国際秩序の変容にもたらす影響」Ⅲ「ロシア」研究会(以下、「ロシア研究会」)では、戦時下のロシア内政を中心に、その対外関係への影響も含めてロシアの政治状況を議論している。

本報告書は、「ロシア研究会」の令和6年度の研究成果報告である。最初の長谷川ペーパーでは、保安関係者(シロヴィキ)の人事を中心に解説がなされている。次の田島ペーパーは、軍に対する統制の制度的変化に触れたうえで、戦争開始後軍の不満が表出したとみられる事件に言及している。3章の鳥飼ペーパーでは、地方知事が中央で閣僚などの要職に就いた事例を紹介し、戦時下の地方エリートの動向を分析している。4章の安達ペーパーは、原子力企業ロスアトムの動向を紹介し、制裁下のロシア経済の一端を明らかにしている。次いで、第5章の油本ペーパーは、故アレクセイ・ナワリヌイの妻であるナワリナヤの活動を紹介し、ロシア国外の反対派が抱える困難を紹介している。対外関係は、6章の大串ペーパーと7章の加藤ペーパーで論じられている。大串ペーパーでは、ロシアの戦争目的を整理し、最近活発になってきた停戦交渉の落としどころを探っている。ロシアの対東アジア(中国と北朝鮮)政策に関しては、加藤ペーパーで論じられる。戦争によってロシアは両国と緊密な関係を構築したが、その内容が紹介される。以上のように、各ペーパーは短いものであるが、中央政治の動向から、地方、反対派、経済動向、さらには対外関係までをカバーしており、現在のロシアの政治状況を広く概観できるようになっている。なお、本報告書はあくまで中間段階の簡略化されたレヴューであり、よりまとまった成果は令和7年度の研究会を踏まえて公表される予定になっている。

本報告書に記載された各ペーパーの内容は、それぞれ研究会委員の個人的見解であり、いかなる組織・機関の公式な見解を代表するものではない。

ロシア研究会主査 慶應義塾大学法学部教授 大串敦

下の各行は、分割したPDFにリンクしてあります。一番下に全文PDFへのリンクがあります。
第1章 ロシア国家中枢の人事政策――パートルシェフ
大統領補佐官の人事発令に着目して
長谷川雄之
第2章 ロシア・ウクライナ戦争下でのロシア政軍関係 田島理博
第3章 戦争中のロシアの知事人事 鳥飼将雅
第4章 対ロ制裁とロシア経済
−原子力分野(ロスアトム)に着目して
安達祐子
第5章 ロシア国外の反体制派―ユリア・ナワリナヤ 油本真理
第6章 停戦への道・講和への道:ロシアとウクライナの
死活的利害と妥協点はどこにあるのか
大串敦
第7章 ロシアと東アジア--転機としての2024年-- 加藤美保子