はじめに
2022年9月11日、ロシアの82の連邦構成主体(=地域)で統一地方選挙が行われた。今回は14地域で首長選挙が実施され、すべての選挙で現職首長(および代行)が当選を果たし、6地域で行われた構成主体議会選挙や12の行政中心都市で行われた市議会選挙では、すべての比例区において「統一ロシア」が第1党となった。その他、合計4,600もの地方自治体で選挙が行われた。
2022年2月24日から始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻および対ロ経済制裁を理由に統一地方選挙の延期や中止が提案される一幕もあったものの、ロシア国内に広がる愛国心の高まりを利用した選挙運動が政権に有利な形ではたらく結果となった。本稿では、主要な選挙の結果についてロシアの政治家、政治評論家による評価も交えて概説する。
なお、ロシアによるウクライナ領クリミアの併合は国際的には承認されていないが、以下では、ロシアの情報源に依拠しているため、クリミア共和国およびセヴァストポリ市の選挙結果についても含まれている。しかし、当然のことながら、ロシアによるクリミア併合を是認するものではない。
ウクライナ侵攻の影響
ロシアのウクライナ侵攻に伴う西側の対ロ制裁によって、経済低迷が明らかとなった2022年3月、財政難や制裁下での経済状況を理由に一部の地域首長が統一地方選挙の延期を提案したと報道で伝えられた(コメルサント、2022.3.21)。2022年4月27日に連邦議会付属の諮問機関で、連邦上下院議長や委員会議長に加えて、地域議会の代表らも出席する「立法評議会」の会合がサンクトペテルブルグで開催される際にプーチン大統領が統一地方選挙を実施するか否かについて言及すると思われていたが、特に延期や中止についての発言はなかった。ところが、5月17日に行われた連邦下院の会合で野党「公正ロシア」のセルゲイ・ミロノフ党首が統一地方選挙の延期を求める発言をした。ミロノフは、「ウクライナでの軍事作戦期間中の統一地方選挙は中止し、2023年に延期すべき」だと発言した。ミロノフは「このような状況において国は1つになるべきであるのに対して、選挙ではお互いに争うことになる」ことを統一地方選挙実施に反対する理由として挙げた。一方でその翌日、与党「統一ロシア」のトゥルチャク幹事長は、選挙が憲法に定められた国民の権利であること、また政治的競争は国を弱体化させるものではなく、むしろ強化するものであるとして、ミロノフの提案に異議を唱えた。
こうして7月11日にプーチン大統領は統一地方選挙の実施を決定した。専門家は過去5年間で政権にとって最も良い結果を出せるだろうと予測した。2022年9月1日にロシアのシンクタンク、市民社会発展基金の主催で「2022年統一地方選挙:結果の特徴・傾向・予測」と題した専門家による円卓会議が開催された。同基金のコンスタンチン・コースチン総裁は、「選挙運動の進捗や成果に影響を与える主要なファクターは、特別軍事作戦の遂行によって生じた『愛国的コンセンサス(Патриотический конценсус)』と対ロ制裁への対抗措置である。そしてその恩恵を主に受けるのは『統一ロシア』であり、大統領の支持を受けている知事候補である」(コメルサント、2022.9.1)と発言した。「愛国的コンセンサス」は「ドンバス・コンセンサス」や「ドネツク・コンセンサス」とも呼ばれ、今般のウクライナ侵攻を背景に、国民が一致団結しようとしている傾向を示すときに使われている。また、政治情勢センターのアレクセイ・チェスナコフ所長は「今回の選挙が『政権への信頼についての国民投票(レファレンダム)』になるだろう」とコメントした。
統一地方選挙
こうして一時は実施が危ぶまれた統一地方選挙であったが、予定通りに行われた。今回の統一地方選挙の特徴を2つ紹介しておく。まず、2019年9月のモスクワ市議会選挙以来、一部地域で導入されているオンライン電子投票について、今回はカリーニングラード州(初)、カルーガ州(初)、クルスク州、ノヴォシビルスク州、プスコフ州、トムスク州、ヤロスラヴリ州とモスクワ市で実施された。投票初日となった9日にモスクワ市では早速、外部からのハッキングによってシステムが故障するという惨事に見舞われたが、すぐに復旧し、再開し、初日だけで投票率が16.7%に達した。翌10日にはプーチン大統領もオンライン電子投票を実施した。
また、今回の統一地方選挙の投票日程について、多くの地域で2020~2021年の例に倣って3日間という日程が設定された。ただし、首長選挙が行われたトムスク州とキーロフ州は2日、ブリヤート共和国、マリ・エル共和国、スヴェルドロフスク州は1日のみの実施であった。また、地域議会選挙については、北オセチアだけが2日間の日程となった。行政中心都市の市議会選挙では、ゴルノアルタイスク(アルタイ共和国)、ペトロパヴロフスク・カムチャツキー(カムチャッカ地方)、ウラジオストク(沿海地方)、オムスク、トヴェリで1日のみ、キーロフ市は州知事選挙と合わせて2日の投票日が設定された。
①地域首長選挙
今回の統一地方選挙では、14の連邦構成主体で住民による首長の直接選挙が行われ、すべての地域で現職首長および事前に大統領によって任命された首長代行が勝利し、予想外の展開とはならなかった。
最も高い得票率で当選を果たしたのは、ブリヤート共和国のアレクセイ・ツィデノフ首長であった(86.23%)。民族的にブリヤート人であるものの、チタ州(現ザバイカル地方)出身のツィデノフに対して、地元出身で共産党のヴィクトル・マルィシェンコが対立候補として名乗りを上げたが、2位にとどまった。また、今回の首長選挙で数少ない注目地域であったカリーニングラード州ではアントン・アリハノフ知事が80.21%で2期目の再選を果たした。ロシア本土から離れ、ドイツと国境を接するロシアの飛び地、カリーニングラードでは、ロシアとEU諸国との関係悪化の影響を受けて、陸路が閉鎖されそうになるという事態に直面した。同州では知事の就任期間が短く、2期目を迎えたのは過去7人の知事の中で1人しかおらず、アリハノフが2人目となるか注目されていた。また、もう1つの注目地域は獄中の反政府活動家アレクセイ・ナヴァリヌィ陣営が拠点を置く、トムスク州であった。2020年9月のトムスク市議会選挙では37議席中統一ロシアは11議席にとどまり、ナヴァリヌィが打ち出した「スマート投票」の候補者が19議席も獲得していた。しかし、統一ロシアのアレクセイ・マズール知事代行は84.94%という3番目に高い支持率で当選を果たした。また、政権への支持率が低いことで知られるヤロスラヴリ州ではヤブロコ出身で、今回は無所属での出馬となったミハイル・エヴラエフ知事代行が82.31%の得票で当選を果たした。彼らのほか、マクシム・エゴロフ・タンボフ州知事(84.95%)、パヴェル・マルコフ・リャザン州知事(84.55%)、アレクサンドル・アヴデエフ・ウラジーミル州知事(83.68%)、ユーリー・ザイツェフ・マリ・エル共和国首長(82.44%)と14人中8人が80%以上の得票で当選を果たした。
一方、今回の選挙で最も低い支持率だったのはウドムルト共和国のアレクサンドル・ブレチャロフ首長で64.37%となった。第2位となった共産党のアレクサンドル・スィロフの得票が19.79%と20%に迫る勢いで、2位の候補者が獲得した得票率としては最も高いものとなった。また、今回の当選によって唯一、3期目に突入するスヴェルドロフスク州のエヴゲニー・クイヴァシェフ知事も、65.78%と今回の候補者の中では2番目に低い支持率で再選を果たした。クイヴァシェフに対しては、長期政権に対する住民の疲れと、めぼしい成果を上げられていない現状から決選投票へもつれ込む可能性も示唆されていた。
住民の直接選挙に加えて、連邦大統領によって提案された候補者の中から地域議会によって首長が選出される間接選挙制度を採用しているアディゲ共和国でも首長選挙が行われた。プーチン大統領は8月末に共和国議会ハセに対して、現職のマラト・クムピロフ共和国首長、共和国議会議員で「ジル・モンタージュ・サービス」の法律コンサルタント、エヴゲニー・グルニン、共和国議会議員で立法委員会議長のアレクサンドル・ロボダ、と3人の候補者を提案していたが、2017年1月から共和国首長を務めるクムピロフが49議席の全会一致で再選を果たした。
表1 2022年連邦構成主体首長選挙結果一覧
地域名 |
当選者(所属)(前職)/第2位となった候補者(所属) |
得票率 |
投票率 |
|
1 |
ブリヤート共和国 |
アレクセイ・ツィデノフ(統一ロシア) (2017年2月~5年7カ月現職) ヴィクトル・マルィシェンコ(共産党) |
86.23% 7.12% |
39.47% |
2 |
カレリア共和国 |
アルトゥル・パルフェンチコフ(統一ロシア) (2017年2月~5年7カ月現職) アンドレイ・ロガレヴィチ(公正ロシア) |
69.15% 13.41% |
27.94% |
3 |
マリ・エル共和国 |
ユーリー・ザイツェフ(無所属) (2022月5月~4カ月代行) アントン・ミルバダレフ(自由民主党) |
82.44% 7.90% |
31.99% |
4 |
ウドムルト共和国 |
アレクサンドル・ブレチャロフ(統一ロシア) (2017年4月~5年5カ月現職) アレクサンドル・スィロフ(共産党) |
64.37% 19.79% |
37.48% |
5 |
ウラジーミル州 |
アレクサンドル・アヴデエフ(統一ロシア) (2021年10月~11カ月代行) アントン・シドロコ(共産党) |
83.68% 6.53% |
29.05% |
6 |
カリーニングラード州 |
アントン・アリハノフ(統一ロシア) (2016年9月~6年現職) エヴゲニー・ミシン(自由民主党) |
80.21% 6.40% |
38.49% |
7 |
キーロフ州 |
アレクサンドル・ソコロフ(統一ロシア) (2022年5月~4カ月代行) セルゲイ・ママエフ(共産党) |
71.85% 13.42% |
34.40% |
8 |
ノヴゴロド州 |
アンドレイ・ニキーチン(統一ロシア) (2017年2月~5年7カ月現職) オリガ・エフィモヴァ(共産党) |
77.03% 10.99% |
32.79% |
9 |
リャザン州 |
パヴェル・マルコフ(統一ロシア) (2022年5月~4カ月代行) デニス・シドロフ(共産党) |
84.55% 5.68% |
42.92% |
10 |
サラトフ州 |
ロマン・ブサルギン(統一ロシア) (2022年5月~4カ月代行) オリガ・アリモヴァ(共産党) |
72.36% 14.30% |
53.71% |
11 |
スヴェルドロフスク州 |
エヴゲニー・クイヴァシェフ(統一ロシア) (2012年5月~10年4カ月現職) アレクサンドル・イヴァチェフ(共産党) |
65.78% 12.90% |
28.47% |
12 |
タンボフ州 |
マクシム・エゴロフ(統一ロシア) (2021年10月~11カ月代行) アンドレイ・ジトコフ(共産党) |
84.95% 6.77% |
57.87% |
13 |
トムスク州 |
ウラジーミル・マズール(統一ロシア) (2022年5月~4カ月代行) ガリーナ・ネムツェヴァ(公正ロシア) |
84.94% 6.08% |
30.93% |
14 |
ヤロスラヴリ州 |
ミハイル・エヴラエフ(無所属) (2021年10月~11カ月代行、連邦独占禁止局副長官) ミハイル・パラモノフ(共産党) |
82.31% 6.14% |
26.65% |
15 |
アディゲ共和国 |
マラト・クムピロフ(統一ロシア) (2017年1月~5年8カ月現職) |
49/49 |
(出典)中央選挙管理委員会発表の結果を基に作成。以下同。
②地域議会選挙
首長選挙に加えて、北オセチア共和国、ウドムルト共和国、クラスノダル地方、ペンザ州、サラトフ州、サハリン州の6地域で地域議会選挙が行われた。すべての比例選挙で、統一ロシアが第1党となり、うちサハリン州を除く5地域で統一ロシアの得票率は過半数を超えた。唯一、統一ロシアの得票率が比例区で47.20%と過半数を超えなかったサハリン州だが、小選挙区については18議席中17議席を統一ロシアが獲得している。6地域中5地域で2位となった共産党は、中でもウドムルト共和国の比例区で25.56%と健闘したが、小選挙区も併せると60議席中3議席にとどまっている。サラトフ州(14.69%)とサハリン州でも一定の支持を得たが、残りは10%前後の得票であった。ほかの政党の結果はさらに芳しくなく、公正ロシアはペンザ州、自由民主党は北オセチア共和国で5%を超えることができずに議席を失い、「新しい人々」が議席を獲得したのはサハリン州だけにとどまった。議会外政党の中では年金生活者党がサハリン州で1議席を獲得した。
表2 2022年連邦構成主体議会選挙(比例区)結果一覧(%)
地域 |
統一ロシア |
共産党 |
自由民主党 |
公正ロシア |
新しい人々 |
投票率 |
|
1 |
北オセチア共和国 |
67.88 |
12.35 |
1.57 |
14.27 |
― |
59.2 |
2 |
ウドムルト共和国 |
52.07 |
25.56 |
13.64 |
6.06 |
4.14 |
39.79 |
3 |
クラスノダル地方 |
70.81 |
10.75 |
6.63 |
5.77 |
4.86 |
53.3 |
4 |
ペンザ州 |
74.91 |
8.53 |
5.59 |
3.30 |
2.88 |
45.13 |
5 |
サラトフ州 |
59.92 |
14.69 |
9.44 |
6.77 |
3.60 |
42.93 |
6 |
サハリン州 |
47.20 |
14.25 |
9.19 |
5.14 |
8.89 |
28.30 |
表3 小選挙区も合わせた議席獲得数
③市議会選挙
さらに12の連邦構成主体では行政中心都市で市議会選挙が行われ、いずれの市議会選挙でも統一ロシアが第1党となった。比例投票が行われた7つの市議会では、キーロフ市の33.89%からトゥヴァ共和国クィズィル市の75.33%まで得票率に大きく開きがあった。一方、小選挙区のみで投票が行われた5つの市議会選挙を見るといずれも統一ロシアの圧勝で、トヴェリ市では25議席すべてを統一ロシアが獲得、アルタイ共和国ゴルノアルタイスク市で21議席中20議席、オムスク市で40議席中35議席、ヤロスラヴリ市議会で38議席中34議席を統一ロシアが獲得する大勝利となった。35議席中統一ロシア獲得議席は23議席にとどまっている沿海地方だが、8議席を無所属の候補者が獲得しており、野党の健闘というわけではなかった。
この他に首都モスクワ市では、145の地区議会のうち126議会で選挙が行われ、5年前に野党の大勝利となった前回の選挙(14.82%)の約2倍となる33.9%もの高い投票率となった(RBC, 2022.9.12)。すでに初日の時点で16.7%と前回の投票率を超え、3日間で合計170万人以上が投票し、その大半(約169万2,000人)はオンライン電子投票での投票であった。今回の投票の結果、すべての地区で統一ロシアおよびソビャニン市長率いるモスクワ市政府を支持する連合「My Region」が多数派となった。1,417議席中1,160議席(81.86%)を統一ロシアが獲得し、続いて、「My Region」の候補者が134議席(9.46%)、共産党が42議席(2.96%)、公正ロシアと「新しい人々」が20議席(1.41%)ずつ、自由民主党が11議席(0.78%)、ヤブロコが3議席(0.21%)、ロシア共産主義者党が1議席(0.07%)、無所属が26議席(1.83%)となった。うち、ヤブロコは前回176議席、無所属は108議席獲得しており、大きく議席を失った。今回の投票の結果については、ロシア政府への支持だけでなく、有権者にとってより身近な存在であるソビャニン・モスクワ市長に対する支持の高さを示している。大統領後継候補の1人としても注目されるソビャニン市長は来年2023年に任期満了を迎えるため、モスクワ市では市長選挙が行われる予定である。
選挙に対する評価
①政府要人の発言
ペスコフ大統領報道官は、9月11日に行われたブリーフィングで今回の統一地方選挙の結果について、「大統領と大統領による決定に対する支持の高さを示したものである」と語り、ウクライナにおける「特別軍事作戦」に対して国民の支持を得たとの考えを示した(大統領HP、2022.9.11)。
統一ロシアの党首、メドヴェージェフ元首相は「出口調査を含めた暫定結果は、選挙が行われたすべての地域で『統一ロシア』のパフォーマンスが十分であったことを証明している」と語り、今回の選挙結果が満足いくものであったとの見方を示した(RIAノーヴォスチ, 2022.9.11)。また、エヴゲニー・レヴェンコ副党首も今回の選挙結果をこれまでで最もよかった成果の1つであると語り、その勝利を「愛国的コンセンサス」と結び付けた(コメルサント、2022.9.12)。
2022年5月に党の創設者で創設以来党首を務めてきたウラジーミル・ジリノフスキーが亡くなった後、最初の選挙を迎えた自由民主党の新党首レオニード・スルツキー連邦下院議員は、今回の統一地方選挙の結果について、「予想していたより良かった」と評価した(TASS, 2022.9.12)。
②専門家の見解
上述のコースチン市民社会発展基金総裁は、「統一ロシアは史上最高の結果を得た。統一ロシアが地域および地方自治体の議会で約80%もの議席を獲得した理由として、すべての専門家がウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦を挙げるだろう。対外情勢や情報戦術によって、今回の選挙は事実上、大統領に対する信頼を図る国民投票となった。統一ロシアや同党支持の地域首長への投票は、事実上、プーチン大統領への支持を表明したことと同等である。また、モスクワ市では、市民によるソビャニン市長への信頼の証でもある」と語り、大統領への信頼が厚いことを証明する選挙であったと評価した。ただし、「来年は制裁及び社会・経済情勢全体が選挙に大きな影響を与えるので、今年の様にはならないだろう」と今後の厳しい見方も述べた。(コメルサント、2022.9.12)
また、政治学者のコンスタンチン・カラチェフは、今回の高い投票率がオンライン電子投票によるものだと評価した。「2017年と比較することは必ずしも正しくない。当時はオンライン電子投票制度がなく、投票は3日間ではなく1日だけであった。重要な役割を果たしたのは、オンライン投票を呼び掛ける活動であり、情報戦略であった。有権者にはSMSで通知メッセージが送付されるなど、利便性が勝利したといえる。オンライン電子投票は政府にとっても市民にとっても非常に便利なツールであることが明らかとなったので、今後、投票の主要な形となっていくであろう。」(RBC, 2022.9.12)
そして政治学者のアレクサンドル・クィネフは、共産党の低迷が顕著であったことを指摘した。「愛国心が収斂されるような状況下で政権支持派が勝利するのは当然のことである。したがって、共産党は今回の選挙の最大の犠牲者となった。彼らを支持する中核層は、以前は抗議ムードによって投票していたのだが、そういう人たちがほかの政党の支持に回ってしまったのである。そのため、一部の地域では自由民主党の方がよい成果を上げ、特に地元のビジネスマンたちがそれに貢献した」との見解を示した。(ヴェドモスチ、2022.9.11)
おわりに
2021年は連邦下院選挙との同時開催、次回2023年は2024年3月に控える大統領選挙前の最後の選挙となるが、このような重要な政治日程と重なることなく過ぎた今回の統一地方選挙は、多くの専門家による事前の予想通り、非常に穏やかで、波風の立たない選挙となった。ウクライナにおける「特別軍事作戦」によって歴史的な勝利を実現した統一ロシアだが、選挙運動のスローガンや公約の中には、ウクライナ侵攻に関する話題がほとんど出ていなかったあたりが、ロシアの現状を反映しているとも言えるだろう。プラスに作用する側面だけをうまく活用し、マイナスに作用する側面はできるだけ触れないという政府の戦略がうまく機能する結果となった。