イベント実施報告

第2回東京グローバル・ダイアログ

2021-03-04
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第2回東京グローバル・ダイアログは、「インド太平洋の今日と明日:戦略環境の変容と国際社会の対応」のテーマの下で、2021年2月25日から27日までオンラインで開催された。19か国・1地域から64名のスピーカーが参加し(登壇者リストはこちら)、分野・地域別に12のセッションを開催した(各セッションのサマリーと動画はこちら)。

オープニングには、菅総理大臣がメッセージを寄せ、茂木外務大臣が「ポスト・コロナの時代を見据えた日本外交」について基調講演を行った。

ダイアログにおける議論は、激化する米中対立・戦略的競争、これがインド太平洋地域に及ぼす影響、そして戦略的変容に直面する日本、地域諸国及び国際社会が取り得る政策を中心に展開された。多岐にわたる議論が行われたが、以下にそのいくつかを紹介する。

―米中関係は緊張が続くと予想され、人権問題などを巡ってさらに悪化する可能性もある。緊張関係は構造的であると考えられ、中国のGDPが米国に追いつき追い越す可能性がある今後20年の間に激化する可能性がある。気候変動などの地球規模課題に関する米中協力の可能性は認識されているが、これが二国間関係全般にもたらす前向きの影響は限定的ではないかとみられる。

―米中間の戦略的競争の性格と原因を巡っては、経済・軍事力のバランスのシフトと中国による既成秩序への挑戦、中国の政治体制、特に共産主義及び中国共産党の問題、あるいは権威主義体制と資本主義の組み合わせによる中国の経済成長など、様々な見方がある。

―米中両国はいずれも、相手側が挑発的行動を強めていると考えている。こうした対立的な見解は、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)及び日米豪印の協力枠組みであるQUADをどのように解釈するかにも反映されている。米国の観点からは、これらのイニシアティブは中国の政策や行動に対応するものである一方、中国は、この地域における米国の戦略的優位を維持するための枠組みであると考える。

―西太平洋、南シナ海、及びとりわけ台湾周辺で、米中対立の激化が予想される。こうした対立が軍事衝突に発展する事態は回避される必要があり、米中間の危機管理、リスク低減、信頼醸成のために対話や協議を再活性化させることが重要である。

―核兵器使用のリスクが冷戦終結以降最も高まっているとの危機感がある。多国間軍備管理体制を大国がリードして修復する必要がある。

―技術を巡る米中関係は競争と協力の側面を持ち得るが、これについては、サプライチェーンリスクや、データセキュリティの観点からの人権も重要な論点である。しかし、現在の米中間の「技術の地政学」を巡る競争は、デカップリングや冷戦2.0のような状態には必ずしも至らないかもしれない。

―大国間競争の東南アジア及び南アジアへの影響については、経済では中国に依存し安全保障では米国に依存するこの地域において、デカップリングがさらに進むリスクがある。この地域の多極的なダイナミックは重要であり、安定を維持するために地域協力をさらに強化する必要がある。ASEAN中心性は特定の挑戦に対応する上で有効性に疑問が付されることもあるが、長期的な安定に貢献してきている。

―欧州諸国のインド太平洋への関心は高まっているが、この地域における安全保障アクターとしての欧州の位置づけは不透明である。中国との関係において、人権などの規範的価値と経済的利益との間でいかにバランスをとるかは、困難な課題である。民主主義諸国間の協力は重要であるが、どのようにして象徴にとどまらないものとするか、また、どのフォーマットが協力の具体化にとって有効かが問われる。FOIPは概念として広すぎるかもしれず、QUADの方が明確である。

―ロシアは、中ロの封じ込め政策としてFOIPに反対している。ロシアは自らの大ユーラシア構想や「東方シフト」を推し進めてこれに対抗しようとしているが、これらの政策のアジアにおける具体的な成果は道半ばである。

―中東地域は、最近の米政権による立場の変化に伴い、地域自体の戦略的課題に直面してきている。地域における米のプレゼンスはアジアへのシフトを反映して減少した。バイデン政権によるイラン―特にJCPOA―への関与再開は、地域内で分断したそれぞれの立場から注視されている。

―マルチラテラリズムが危機に直面する中であるが、パンデミックの現場で協力体制が機能した事例などを積み上げていくことが重要である。気候変動については、バイデン政権の当初の行動には期待が持てるが、パリ協定の目標達成は非常に困難であろう。

―北東アジアにおいては、北朝鮮を巡る情勢は当面やや落ち着いているかもしれないが、関心が払われなければ流動的となる可能性がある。台湾及び東シナ海においては、中国が現状を変更しようとして複合的かつ持続的なアプローチをとる中で緊張が高まっている。軍事及び政治にまたがる調整された戦略的な対応が必要である。

―変化しつつある戦略環境は、地域の領土・海洋問題と法の支配に影響を及ぼしている。中国は、東シナ海及び南シナ海の双方において一方的な現状変更の試みを続けている。法の支配などの共通の価値を堅持する諸国間の協力が必要である。

―戦略環境の変化に対応して、インド太平洋地域外の国を含む民主主義諸国の間の協力が重要である。FOIPやQUADのような、ルールに基づく開かれた多国間主義の重要性が強調され、これらを推進する上での日本の役割が高く評価されている。日本はまた、競争と協力のダブルトラックにより米中関係をマネージしようともしている。日本が、特にG20のような多国間のフォーラムを通じて、米中対立を乗り越えるような協力をリードすることへの信頼と期待がある。