護衛艦移転にみる対比防衛装備移転の現段階

竹沢啓伸(日本国際問題研究所)

護衛艦移転にみる対比防衛装備移転の現段階

「研究レポート」は、日本国際問題研究所に設置された研究会参加者により執筆され、研究会での発表内容や時事問題等について、タイムリーに発信するものです。「研究レポート」は、執筆者の見解を表明したものです。

はじめに

2026年5月、海上自衛隊のあぶくま型護衛艦のフィリピンへの移転に向けた作業の開始が発表された。実現すれば、同年4月に改正された防衛装備移転三原則の下で、殺傷性を有する防衛装備品を移転する初の事例となる。フィリピンへの護衛艦移転は、国交樹立70周年の節目である現在、急速に進展しつつある日比安全保障協力の現段階を象徴する事例の一つである。

本レポートでは、現在拡大しつつあるフィリピンへの日本の防衛装備移転が、フィリピンの安全保障政策の中でいかなる意義を持つか、そして日本はこの移転を通じて何を達成できるかを論じる。

背景――フィリピンの安全保障政策の転換と装備需要

近年、フィリピンの安全保障政策は大きな転換・拡充期にある。フィリピン軍(AFP)は創設以来、国内の共産主義勢力やイスラム系武装勢力に対する対反乱作戦を主要な任務とし、対外的な安全保障の大半を米比相互防衛条約に基づく米軍のプレゼンスに依拠してきた。その結果として、フィリピン自身の海軍・空軍の能力整備は後手に回ってきた1 。例を挙げると、本土から離れた島嶼や領海の警備で重要な役割を果たす大型の水上戦闘艦については、2011年に米国から元米沿岸警備隊のハミルトン級カッター(約3,250トン・1967年就役)が導入されるまで、第二次世界大戦中に米海軍で就役した著しく旧式のキャノン級護衛駆逐艦(約1,600トン・1943年就役)が最大かつ唯一であった。また戦闘機については、2005年の米国製F-5軽戦闘機退役後、2015年に韓国製のFA-50軽戦闘機が導入されるまで、不在の状況となっていた。

しかし、南シナ海における中国の威圧的行動の常態化2 、およびフィリピン国内治安問題の改善を受け、フィリピンの安全保障政策は対外的な安全保障へと重点を移しつつある。この転換は、フィリピン軍の任務の重点を国内の対反乱作戦から対外へ移すことを決定づけたアキノ政権に端を発し、ドゥテルテ政権期の停滞を挟みながらも、現マルコス政権下で一層加速している3 。テオドロ国防長官は2024年1月、領土・領海および排他的経済水域への戦力の投射を中核に据えた包括的群島防衛構想(CADC)を発表した4 。ほぼ同時に公開された改訂フィリピン軍近代化計画第3段階(Re-Horizon 3)は、10年間で350億米ドル規模の、フリゲート、潜水艦、戦闘機、地対艦ミサイル、防空システム等を含む整備を計画している5 。

こうした背景から、日比の安全保障協力も急速に深化している。2026年5月のマルコス大統領訪日に際して発出された日比共同声明では、両国関係の「包括的・戦略的パートナーシップ(CSP)」への格上げが宣言された。CSPの締結はフィリピンにとって初であり、フィリピン唯一の公式な同盟国である米国を別格とすれば、このCSPをフィリピンの対外関係において最上位のパートナーシップと位置づける向きもある。同声明ではまた、日本によるフィリピン軍の能力構築への貢献、防衛装備移転の一層の促進が確認された6 。

対フィリピン装備移転の現段階

日本は1967年の武器輸出三原則、および1976年の政府統一見解に基づき、自国の防衛装備の海外移転を原則として認めない立場をとってきた。しかし2014年4月に防衛装備移転三原則が策定され一定の条件下での移転が認められるようになり、2022年12月の国家安全保障戦略では「防衛装備移転の推進」が明記された7 。

従来よりフィリピンには、2016年2月に締結された防衛装備移転協定に基づき、防衛装備品の移転が進められてきた。海上自衛隊の中古TC-90練習機の移転および運用支援、陸上自衛隊のUH-1Hヘリコプターの部品譲渡、さらに2023年から2024年にかけ、初の新造完成品として、三菱電機製の固定式警戒管制レーダー(FPS-3ME)および移動式警戒管制レーダー(TPS-P14ME)の移転が行われた。さらに2023年11月には、同年4月に創設された政府安全保障能力強化支援(OSA)の初めての案件としてフィリピンに対する沿岸監視レーダーシステムの供与が決定され、2026年2月に移転された8・9。

2026年4月21日、日本ではそれまでの防衛装備移転における5類型が撤廃され、審査次第ではあらゆる防衛装備品の移転が可能となった10 。直後の5月5日にマニラで行われた小泉防衛大臣とテオドロ国防長官の防衛相会談において、両者は装備移転を検討する二国間ワーキンググループの設置に合意し、「防衛装備・技術協力のさらなる推進に関する日・フィリピン防衛相の声明」に署名した11 。2026年7月7日には、テオドロ国防長官によりあぶくま型護衛艦5隻の取得で両国が実質的に合意したことが明らかにされた。あぶくま型護衛艦は海上自衛隊での退役後、2〜3年以内にフィリピン海軍へ移転される見通しであり、そのほか中古TC-90練習機の追加移転についても併せて協議が進められている 12。

装備移転の効果――日本は何を達成しうるか

フィリピンへの防衛装備移転は日本に何をもたらすか。防衛白書は装備移転について「二国間の防衛関係を従来の交流から協力へと段階的に向上」させるものと説明する。 13そして小泉防衛大臣はフィリピンへの防衛装備移転についての記者会見において、重要性を記者より問われ、「我が国にとって望ましい、安全保障環境を創出するための重要な、政策的手段」と答えた14 。また、外務省幹部はフィリピンに対する防衛装備移転について、日本と協力的な現政権のうちに協力関係を構築したいという狙いがあることをメディアに明らかにしている15。

とはいえ、武器移転と同盟の関係等を研究したPierreやWalt等は、武器移転は受領国の依存度や代替供給源の有無、運用上の統合度等の各種の条件に左右され、移転国の望む効果を一概にもたらすわけではないことを指摘している16 。では、日本によるフィリピンへの防衛装備移転にはどのような効果が期待できるのか。

今回の装備移転において、日本の求めている究極的な効果は、フィリピンの能力向上を通じて地域の秩序や国際環境を形作るという間接的な利益に求められるだろう。日本は「自由で開かれたインド太平洋」(以下FOIP)を外交政策の中核に据えており、現在の高市政権はこれをアップデートした「進化したFOIP」を掲げている。FOIPはその原則として、自由で開かれた、法の支配に基づく地域秩序の維持を目指すものであり、中国への牽制と、中国を含む地域の安定の追求という二つの方向性を併せ持つ構想と論じられてきた17 。フィリピンの面している南シナ海を含むインド太平洋の海洋秩序の安定は、日本のシーレーン確保上極めて重要であり、日本がFOIPを推進する動機の一つとなっている18 。2026年5月に高市内閣総理大臣が発表した「進化したFOIP」では、同志国との海洋安全保障協力・能力構築を含む多層的な協力を、その達成の手段として新たに提示しており19 、今回のフィリピンに対する装備移転はこうしたFOIPの達成に向けた政策として位置づけられる20 。こうした議論から、今回の護衛艦移転は、フィリピンの海洋安全保障・海洋状況把握能力の向上を通じて地域秩序を維持し、それによりFOIPの理念の実現という効果が期待されている。

では、具体的に今回の護衛艦移転は、上記の効果の発揮に向けた当該地域の秩序の維持、そしてフィリピン軍の能力向上にどのように貢献できるのか。あぶくま型は就役時から限定的な戦闘能力を持つ護衛艦として設計されており、さらに現在では就役から30年以上を経た旧式である21 。そのため能力としては基本的に現在フィリピン軍が導入中の韓国製新造フリゲートに劣っている。しかしながら、Re-Horizon 3の調達計画が陸上発射型の対艦ミサイルや火力打撃システムに偏重し、平時の哨戒・警戒監視や、グレーゾーン環境に対応でき、遠海域で活動できる大型の海上アセットが構造的に手薄であることが指摘されている22 。実際、その中核となる大型の水上戦闘艦艇について、現在フィリピン海軍が保有するのは、中古のハミルトン級カッター3隻と韓国製新造フリゲート4隻にとどまる23 。そうした中でのあぶくま型護衛艦の供与は、フィリピン軍の大型艦艇の不足を埋める一助となる。

また、対潜水艦戦能力の獲得はフィリピン海軍の今後の重要課題となる。対潜水艦戦はソナー運用・哨戒・解析等の総合的な技量が要求される分野であり、アセットを保有すれば十分な能力を獲得できるわけではない。冷戦期以来、対潜水艦戦能力を中核的に育成してきた海上自衛隊はこの分野において優れた能力を保有しており 24、仮にあぶくま型が対潜装備を搭載したままフィリピン海軍に移転された場合、海上自衛隊による教育訓練・共同訓練を通じたフィリピン海軍の対潜能力養成の足場となりうるだろう。こうしたフィリピン軍の能力強化は、フィリピンの海洋安全保障、海洋状況把握能力を大きく向上させることにより、法の支配に基づく国際秩序の維持という日本にとってのFOIPの理念の実現に貢献することが期待される。

さらに第二の効果として、装備移転を通じた日比関係の深化も期待できる。フィリピンは現在、装備品の供給元を米国・韓国・イスラエル等へ多角化させているが、上述した対潜水艦戦は日本が他の供給元に対して比較優位を持つと考えられる分野の一つである。これはフィリピンにとっては能力向上の機会となるのはもちろん、日本がその比較優位を活かしたより緊密な協力関係をフィリピンと築くことにもつながりうる。また日本製の戦闘艦艇をフィリピンが運用することは、海上自衛隊や防衛関連企業とフィリピン側との実務的関係を深め、将来のより高度な装備移転や共同生産に向けた足場となることが期待できる。フィリピン海軍が中古のポハン級コルベットをホセ・リサール級フリゲート導入への移行・訓練の足場として用いてきたように、あぶくま型もまた、海上自衛隊による教育訓練・維持整備支援を通じて日本製艦艇の運用基盤を築き、共同生産や新型艦の取得といった次段階の協力へと橋渡しする役割を担いうるだろう 25。

課題――限界と政策の持続性

フィリピンの安全保障政策の実効性には課題が指摘されている。Re-Horizon 3は極めて大規模であり、その整備の実現性はフィリピンの財政規模に照らして疑問視される 26。実際、2014年から2020年にかけてフィリピン軍は計画資金の約4割しか受領できず、完了した事業は3割弱にとどまった27 。また、長年対反乱作戦を主任務としてきたフィリピン軍にとって、対外的な安全保障への急激な転換の道程は困難だろう。予算配分は依然として、対外的な安全保障の中核を担う海軍や空軍より、陸軍や国内の対反乱作戦を優先しているとの指摘もある28 。

フィリピンの政権を超えた政策の持続性にも課題がある。2028年の大統領選挙の結果次第では、現在の安全保障政策が変容・断絶する可能性が指摘される。フィリピンでは政権交代に伴う外交・安全保障政策の振れ幅が比較的大きく、ドゥテルテ政権初期の対外政策の動揺がその一例である。ただし、装備品の供与による効果は、こうしたリスクに対して比較的レジリエンスが高いと考えられる29 。実際、対中融和路線を選択したドゥテルテ政権や、アロヨ政権であってもフィリピン軍や沿岸警備隊等の近代化、海洋状況把握能力の向上は継続的に行われており、以降の対中強硬的な政策に貢献したことが指摘される 30。

おわりに

2026年7月1日、世界銀行は同じASEAN加盟国であるベトナム等と共に、フィリピンを「低位中所得国」から「上位中所得国」へと再分類した。フィリピンのGDPは過去5年間で年平均5.8%の成長を遂げており、地域における存在感を増しつつある。 31こうしたフィリピンの経済発展を背景とし、フィリピン軍の近代化、そして日本との安全保障協力が進みつつある。

今回のフィリピンへの中古護衛艦の移転は、その戦闘能力が限定的であっても、フィリピンの大型艦艇の不足を埋め、かつ日比関係の強化、FOIPの達成に貢献できる。さらに将来を見れば、日本が貢献をなしうる領域としては、中古装備品にとどまらない、より高性能・高機能な装備品の供与と、海洋状況把握、対潜水艦戦、そして維持整備・教育訓練等の能力構築支援にあるだろう。フィリピン側も、今回発表された中古護衛艦等の移転に加え、防衛装備品の購入、さらには共同生産にまで踏み込んだ協力に強い関心を示しており32 、日比の装備・防衛産業協力は、過去の警戒管制レーダーや今回の中古護衛艦の移転にとどまらず、その種類・質・方式のいずれにおいても深化する余地を残している。

従来、日本とフィリピンを含むASEAN諸国の関係には、経済・社会的発展段階において大きな差が存在した。しかしながら現在、こうした差はASEAN諸国の発展に伴い、徐々に水平化しつつあり、今後もその傾向が続くことが予測されている。 33安全保障においても例外ではなく、フィリピンをはじめASEAN各国の安全保障政策は充実化していく傾向にある。そうした国際環境の中で、日本による防衛装備移転が政策手段として有効であり続けるためには、あらゆる防衛装備移転が日本の望む効果を自動的に生むわけではないことに留意しつつ、地域秩序の安定化の達成というFOIPの理念の実現を念頭に置き、双方の利益にかなう形での防衛協力、装備移転を模索・推進していくべきである。

(脱稿日:2026年8月26日)


  1. フィリピン軍の主任務が長く対反乱作戦に置かれ、対外防衛を米比同盟に依拠してきたこと、およびそこからの領域防衛への転換については、Renato Cruz De Castro, “The Aquino Administration’s 2011 Decision to Shift Philippine Defense Policy from Internal Security to Territorial Defense: The Impact of the South China Sea Dispute,” The Korean Journal of Defense Analysis 24, no. 1 (2012): 67–87; Renato Cruz De Castro, “Strategic Shift in Philippine Defense: From the Aquino to the Marcos Administration,” Friedrich-Naumann-Stiftung für die Freiheit, November 2024; International Crisis Group, “Riding Unruly Waves: The Philippines’ Military Modernisation Effort,” Asia Report, no. 349 (12 August 2025) を参照。
  2. 庄司智孝・辻田友規「フィリピンと南シナ海問題──硬軟両用対応の成否」『NIDSコメンタリー』第347号、防衛研究所、2024年8月20日;庄司智孝「マルコス政権フィリピンの南シナ海政策──修正される米中との距離感」笹川平和財団IINA、2023年3月14日。
  3. 前掲のDe Castro, “The Aquino Administration’s 2011 Decision to Shift Philippine Defense Policy from Internal Security to Territorial Defense”; De Castro, “Strategic Shift in Philippine Defense” を参照。
  4. Renato Cruz De Castro, “The Philippines’ Hard-Balancing Policy against China’s Expansion in the South China Sea: The Comprehensive Archipelagic Defence Concept (CADC),” Defence Studies 26, no. 2 (2025): 236–265.
  5. Simran Walia, “The Philippines’ Horizon 3 Military Modernisation Programme,” MP-IDSA Issue Brief, 28 March 2025.
  6. 外務省「包括的・戦略的パートナーシップに関する日・フィリピン共同声明」2026年5月28日、https://www.mofa.go.jp/files/101035755.pdf;外務省「日・フィリピン首脳会談及び夕食会」2026年5月28日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea2/ph/pageit_000001_00019.html。比大手オンラインメディアはCSPを「同盟には至らないものの、国家間の外交関係としては最高位(the highest level of diplomatic ties countries can have, short of an alliance)」と解説している。Bea Cupin, “Philippines, Japan Elevate Ties, Begin Talks for Intel-Sharing Agreement,” Rappler, 28 May 2026.
  7. 国家安全保障会議決定・閣議決定「防衛装備移転三原則」2014年4月1日;同「国家安全保障戦略について」2022年12月16日。
  8. 政府安全保障能力強化支援は「開発途上国の経済社会開発を目的とする政府開発援助(ODA)とは別に、同志国の安全保障上のニーズに応え、資機材の供与やインフラの整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな無償による資金協力の枠組み」とされる。外務省「政府安全保障能力強化支援(OSA:Official Security Assistance)」https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/ipc/page4_005828.html を参照。
  9. 防衛省「フィリピンへの警戒管制レーダーの移転について」2023年11月2日、https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/11/02d.html;在フィリピン日本国大使館「フィリピンへの警戒管制レーダーの移転」2020年8月28日、https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00187.html;防衛装備庁「防衛装備移転分野の官民連携パートナーシップ(DETRAP)──フィリピンとの防衛装備・技術協力(完成装備品の移転を実現した例)」https://www.detrap-portal.jp/basic/example/philippines/;在フィリピン日本国大使館「遠藤大使による政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じた沿岸監視レーダーシステムの供与式への出席」2026年2月11日、https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_02162.html。
  10. 防衛省「『防衛装備移転三原則』等の一部改正について」2026年4月21日、https://www.mod.go.jp/j/press/news/2026/04/21a.html;経済産業省「『防衛装備移転三原則の運用指針』等の一部改正について」2026年4月21日、https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260421003/20260421003.html
  11. 防衛省「日・フィリピン防衛相 共同プレスステートメント」および「防衛装備・技術協力のさらなる推進に関する日・フィリピン防衛相の声明」2026年5月5日;Kosuke Takahashi, “Japan, Philippines Launch Working Group on Transfer of Abukuma-class Destroyer Escorts,” Naval News, 6 May 2026.
  12. Kosuke Takahashi, “Philippines Confirms Deal to Acquire Five Japanese Abukuma-class Destroyer Escorts,” Naval News, 7 July 2026.
  13. 防衛省『令和7年版 防衛白書』第III部第3章第1節1「同志国などとの連携の意義と変遷」、https://www.mod.go.jp/j/press/wp/wp2025/html/n330101000.html。
  14. 防衛省「防衛大臣記者会見」2026年5月5日、https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2026/0505a_r.html。
  15. 「フィリピンとの安保協力、異例のスピード 日本「親米政権」逃さず」『日本経済新聞』2026年5月29日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2750D0X20C26A5000000/。
  16. Andrew J. Pierre, The Global Politics of Arms Sales (Princeton, NJ: Princeton University Press, 1982) およびStephen M. Walt, The Origins of Alliances (Ithaca, NY: Cornell University Press, 1987) を参照。Waltは、対外援助・武器移転が供与国に強い影響力(leverage)を生むのはごく限られた条件下のみであり、供給源が独占的でなく、受領国が供与国の影響を与えようとしている事例を重視している場合には供与国の影響力は減じることを論じている。また近年の研究として、Jennifer Spindel, “Arms for Influence? The Limits of Great Power Leverage,” European Journal of International Security 8, no. 3 (2023): 395–412 は、武器移転が供与国に受領国への影響力をもたらすとは限らず、むしろ受領国の側が供与国に対してさらなる支援・装備を引き出しうることを論じている。
  17. FOIPが対中牽制と包摂的な秩序形成という二つの方向性を内包する点については、神保謙「『インド太平洋』構想の射程と課題」『国際安全保障』第46巻第3号、2018年12月、1-11頁;大庭三枝「日本の『インド太平洋』構想」『国際安全保障』第46巻第3号、2018年12月、12-32頁;相澤輝昭「『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』の変遷と展開」『海洋政策研究』第15号、2021年、1-37頁を参照。
  18. 小木洋人「日米豪比防衛協力の焦点となる南北シーレーンの地経学」新潮社Foresight、2024年4月25日、https://www.fsight.jp/articles/-/50555。
  19. 外務省「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の進化」2026年5月2日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pageit_000001_02918.html。
  20. 従来の対フィリピン装備移転をFOIPの中に位置づけるものとしては、山﨑周「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想下の日本の対フィリピン防衛協力――日比関係の新章としての準同盟の萌芽」『安全保障戦略研究』第4巻第2号、防衛研究所、2024年3月、203-222頁等がある。
  21. あぶくま型護衛艦は日本本土の防空圏内における沿岸海域の警備を主眼に設計された。そのため対空作戦能力は限定的であり、また搭載兵器の全能発揮も戦闘指揮システムを搭載していないため不十分とされる。香田洋二「国産護衛艦建造の歩み」『世界の艦船』第827集(2015年12月号増刊)、海人社、2015年。
  22. MaxDefense Philippines, “A Brief on the Horizon 3 Phase of the Revised AFP Modernization Program,” 14 September 2023; Sherwin E. Ona, “A ‘Re-Horizoned’ AFP Modernization Program: What Does It Mean?,” BusinessWorld, 27 February 2024, https://www.bworldonline.com/opinion/2024/02/27/577879/a-re-horizoned-afp-modernization-program-what-does-it-mean/.
  23. そのほか、主に訓練用として中古の韓国製ポハン級コルベット(1,200トン)や小型艦艇を運用中。また韓国製フリゲート2隻の取得が計画中。
  24. 相澤輝昭「ポスト四次防における海上自衛隊の防衛力整備構想に関する研究―海上防衛力近代化と「8艦8機体制」―」『戦史研究年報』第18号、防衛研究所、2015年3月、27-55頁;相澤輝昭「ポスト四次防における海上自衛隊の防衛力整備構想―海上航空部隊近代化と「P-3C百機体制」―」『防衛研究所紀要』第18巻第2号、2016年2月、87-110頁。
  25. 移行・訓練プラットフォームの類例として、フィリピン海軍は元韓国海軍のポハン級コルベット「BRP Conrado Yap」(2019年就役)をホセ・リサール級フリゲート導入への移行・訓練基盤と位置づけてきた。Priam Nepomuceno, “BRP Conrado Yap ‘Transition Platform’ for Rizal-Class Frigates,” Philippine News Agency, 5 August 2019, https://www.pna.gov.ph/articles/1076946.
  26. Re-Horizon 3の予算規模・執行面での実現性の課題については、Haena Jo, “Philippines Military Modernisation: Revamped but Not Resolved,” IISS Military Balance+, 23 June 2025;前掲のInternational Crisis Group, “Riding Unruly Waves” を参照。
  27. Renato Cruz De Castro, “Examining Philippine Defense Policy from the Aquino to the Marcos Administration: Determining the Patterns and Goals of 21st Century Philippine Strategic Culture,” Asian Affairs: An American Review 52, no. 4 (2025): 174–198.
  28. Julio S. Amador III, Deryk Matthew Baladjay and Sheena Valenzuela, “Modernizing or Equalizing? Defence Budget and Military Modernization in the Philippines, 2010-2020,” Defence Studies 22, no. 3 (2022): 299–326.
  29. 辻田友規「マルコス現政権の安全保障政策の行方──2025年上院中間選挙と今後の展望」『NIDSコメンタリー』第383号、防衛研究所、2025年6月27日。
  30. 高木佑輔「フィリピンの対中外交――交錯する3つのアクターと3つの政策」竹中治堅編著『「強国」中国と対峙するインド太平洋諸国』千倉書房、2022年、225-243頁;Mico A. Galang, “The Philippines’ Engagement with Japan: A Steady and Deepening Strategic Partnership,” ISEAS Perspective, no. 2026/20 (24 March 2026), https://www.iseas.edu.sg/wp-content/uploads/2026/02/ISEAS-Perspective_2026_20.pdf.
  31. 「ASEAN、成長勢いに差 ベトナム・フィリピン「上位中所得国」に」『日本経済新聞』2026年8月19日、https://www.nikkei.com/article/DGKKZO98241220Z10C26A8EA2000/。
  32. Priam Nepomuceno, “PH Can Now Buy Combat Equipment from Japan,” Philippine News Agency, 6 May 2026.
  33. 大庭三枝「現代日本外交の三〇年――地域主義・アジアの観点を中心に――」『国際政治』第196号、2019年3月、97-115頁;宮城大蔵「日本はアジアとどう向き合ってきたか」波多野澄雄・宮城大蔵編著『日本外交をどう考えるか――日米安保・歴史問題から沖縄まで』慶應義塾大学出版会、2025年、67-98頁。