
米国の内向きシフト
2026年が独立宣言から250年となる機会を利用し、トランプ大統領は米国第一主義の先鋭化によって成果をアピールし、求心力の維持を図るだろう。だが、高関税政策や不法移民の摘発により雇用情勢が悪化し、インフレ圧力はさらに強まっている。性犯罪者エプスタイン元被告の資料公開の遅れもトランプ大統領には逆風となっている。もし2026年の中間選挙で民主党が下院において多数派となれば、トランプ大統領に対する弾劾も検討されるだろう。当面、米国の内政は安定せず、内向き志向が強まることは避けられない。2026年が独立宣言から250年となる機会を利用し、トランプ大統領は米国第一主義の先鋭化によって成果をアピールし、求心力の維持を図るだろう。だが、高関税政策や不法移民の摘発により雇用情勢が悪化し、インフレ圧力はさらに強まっている。性犯罪者エプスタイン元被告の資料公開の遅れもトランプ大統領には逆風となっている。もし2026年の中間選挙で民主党が下院において多数派となれば、トランプ大統領に対する弾劾も検討されるだろう。当面、米国の内政は安定せず、内向き志向が強まることは避けられない。
優先主義の後退と抑制主義の台頭
トランプ大統領は「力による平和」を掲げるが、トランプ政権の国家安全保障戦略では、1期目の「優先主義」(対中抑止優先)が後退し、米本土および西半球(米州)の安全確保を最優先とし、欧州と中東への関与を選択的に行う「抑制主義」(米国の過度な海外介入を回避)が前面に打ち出された。一方、2025年の夏以降、麻薬の密売阻止を名目にベネズエラに対して軍事力の行使も辞さない姿勢を示し続けたのはモンロー主義への回帰で、西半球に対しては介入に積極的であることを示している。また同年6月にはイランの核施設への空爆を実施しており、目的を絞った限定的な武力の行使は西半球以外でも行うことを示している。
また、同戦略はアジアにおいて対中抑止態勢を維持するとしつつも、米国単独では対中軍事バランスを維持できず、またするべきでないとして、同盟国に対して第一列島線における自衛能力の強化と米軍への支援拡大を強く要求している。ヘグセス国防長官は、同盟国を防衛費の大小によってパートナー国と依存国に分け、依存国に対しては防衛義務を放棄することも示唆している。一方、トランプ大統領が米中G2に言及する中、国家安全保障戦略は中国との互恵的な経済関係を重視するとしており、抑制主義の観点から台湾防衛の姿勢が今後さらに後退する可能性もある。
核抑止態勢の見通し
核抑止に関して、トランプ大統領は引き続き強力な核戦力を維持する姿勢を続けるとみられる。しかし、中国が核戦力の増強を急速に行う中、米国が中ロ双方との核戦力のバランスを維持する意思と能力を維持できるのかが焦点になる。トランプ大統領は中ロに軍備管理を呼びかけたこともある。一方、トランプ政権は「黄金艦隊」編成の一環で新型の戦艦を建造する方針を示し、水上発射型の核巡航ミサイルを搭載するとしており、非戦略核の増強が見込まれる。今後発表される核態勢見直しで、核抑止と軍備管理をどうバランスさせるのかに注目する必要がある。
ところで、トランプ政権の国家安全保障戦略は北朝鮮の非核化に一切言及していない。1 期目に北朝鮮との非核化交渉に臨んだトランプ大統領は、北朝鮮との再交渉に前向きな発言を繰り返している。だが、北朝鮮は非核化を前提とした交渉を否定しているため、トランプ大統領は北朝鮮を公式に核保有国として認めた上で、軍備管理交渉を呼びかける可能性が懸念される。
日米同盟への影響
米国で抑制主義が主流となる中、日本は日米同盟の中でより大きな役割を果たすことが求められる。まず、日本に対しても防衛費をGDP比3.5%へ引き上げる要求が突きつけられるだろう。その場合、そもそもその要求に応えるべきなのか、応えるとすれば財源をどうするのか、そして少子化の中でどのように防衛態勢を強化するのかという問題に日本は直面することになる。
次に、トランプ政権が西半球を重視する中で、米中が互いに勢力圏を認め合うようになることが懸念される。中国が西半球から手を引けば、米国がアジアの問題に関与しないという形で米中G2が実現するシナリオが否定できない。米中がG2で合意すれば、台湾が中国に取り込まれる可能性が高まり、日本も日米同盟を基軸とする安全保障を見直さなければならなくなる。
なにより、米国がルールに基づく国際秩序を顧みなくなり、法の支配よりも権力政治が国際関係の基調となる可能性がある。また、米国は同盟への猜疑心を強めており、日本がより自律的な防衛力の構築を迫られることにもなる。仮に数年後に米国で国際主義が勢いを増すとしても、リベラルな国際関係に戻すことは容易ではないだろう。
提言
以上でみたように米中G2の実現と権力政治の復活という最悪のシナリオを避けるため、日本は以下の取り組みを行うべきである。
- ハイレベル外交の常態化:トランプ政権では大統領を中心に少数の閣僚またはアドバイザーが政策に関わっている。トランプ政権の政策に影響を与えるため、首相や閣僚によるハイレベルの外交を頻繁に行う。2プラス2に加え、閣僚級の拡大抑止協議も必要に応じて行う。
- 自衛力の強化:米国が日本へのさらなる防衛費増額を求める中、ミサイルや空中・水中ドローン、潜水艦、統合防空ミサイル防衛、さらにサイバー戦、電子戦、宇宙作戦に関して日本自らが持つべき防衛力について検討する。防衛産業基盤に関しても、造船や先端技術開発などで日米のより緊密な連携を行う。
- 列島線防衛:武力攻撃事態および存立危機事態を想定し、第一列島線に加えて、第二列島線および2つの列島線を結ぶ海上交通路の防衛に関する日米協力を促進する。
- 多国間安全保障枠組みの構築:米軍の相対的負担を減らすとともに、米軍のインド太平洋地域への関与を維持・強化するため、すでに動き出している日米豪比(Squad)の枠組みに、韓国・英国・フランス・ドイツなどを招いてより広域で緩やかな多国間安全保障枠組みの構築を目指す。
(脱稿日2025年12月31日)